社員の心をつかむ福利厚生「社宅・社員寮と寄宿舎」その違いとは?

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社員の心をつかむ福利厚生「社宅・社員寮と寄宿舎」その違いとは?

最近では減少傾向にはありますが、大手企業を中心に福利厚生として、社宅・社員寮がある会社は多くあります。使用者にとって負担は少なくありませんが、労働者からすると住宅費の軽減により手取り額が多くなる、通勤時間の短縮など大きなメリットがあります。

社員寮と同じように会社が提供する社員用の住まいで寄宿舎があります。この違いは何でしょうか?労働者からすると、プライベートの有無ですが、労働基準法上では次のように定義されています。

寄宿舎とは
事業経営の必要上その一部として設けられた共同生活の実態を備えるもの。社宅や社員寮とは異なる。

社宅・社員寮と寄宿舎の違い

社員寮とは

社員寮とは社員向けに提供している住居施設で、一般的には新入社員や独身社員、単身赴任者など入居できる対象が限定されています。使用者が自社物件として保有している場合と、一軒家、アパートやマンションを借り上げて貸し出す形態があります。

寄宿舎とは

社員寮であるアパートやマンションは、各個人にプライベートな空間がありますが、寄宿舎は労働者が共同部屋において寝食を共にするのが特徴です。一定のルールや制限を設け、共同生活を行います。

寄宿舎は労働者が共同生活を行うため、ルールが必要となりますが、設けることで使用者に私生活を管理されてしまう恐れがあります。それを防ぐため、労働基準法では寄宿舎についての規定を定めています。

共同生活とは
トイレや風呂が共同になっているだけではなく、起床時間・就寝時間、食事等に一定のルールがあり、労働者が一緒に生活を送っていること。

ブラック企業の常識「集団行動で世間と隔離」

M部長

会社の隣の一軒家が格安で購入できたため、寄宿舎として使用することになった。チャッピー、お前も寄宿舎に入れてやろう!明日から引越しせよ。

チャッピー

いや通勤は特に不便が無いので、寄宿舎に入る必要性がありません…

M部長

絶対に入らねばならん!我々は寝食を共にすることで、チームワークを高め、より会社の利益を上げるんだ!寄宿舎が会社の隣だから、毎日20時間働けるぞ!

イワオ

通勤時間が無くなるし、無限に働けるな!

チャッピー

一日のほとんどを会社で過ごすのに、寄宿舎に入ったらプライベートな時間はゼロだな…危険な集団生活を送りたくない…

職場におけるリスキーシフト

リスキーシフトとは、社会心理学の用語で、1人であれば節度のある合理的な判断ができる人でも、集団になるとリスクの高い危険な判断をしてしまうことです。「赤信号、みんなで渡れば怖くない」という言葉のように、集団になると違法行為も罪の意識が薄れてしまいます。

「寄宿舎生活の自治」法94条の条文解説

1項 寄宿舎生活の自治

使用者は、事業の附属寄宿舎に寄宿する労働者の私生活の自由を侵してはならない。

出典:労働基準法 | e-Gov法令検索

(条文解説)
使用者は寄宿舎で暮らしている労働者の、私生活の自由を侵してはならず、具体的には次の項目が禁止されています。

  • 外出、外泊に使用者の承認が必要とすること
  • 教育、娯楽等の行事への強制参加させること
  • 面会の自由を制限すること

寄宿舎に管理人や寮母など置くことは、私生活の自由を侵さない限り、禁止ではありません。

2項 寄宿舎の役員の選任

使用者は、寮長、室長その他寄宿舎生活の自治に必要な役員の選任に干渉してはならない。

(条文解説)
使用者は、寮長や室長など、寄宿舎生活の自治に必要な役員の選任に干渉することを禁止しています。

「寄宿舎規則の作成」法95条の条文解説

1項 寄宿舎規則の作成

事業の附属寄宿舎に労働者を寄宿させる使用者は、左の事項について寄宿舎規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。これを変更した場合においても同様である。

1号 起床、就寝、外出及び外泊に関する事項
2号 行事に関する事項
3号 食事に関する事項
4号 安全及び衛生に関する事項
5号 建設物及び設備の管理に関する事項

(条文解説)
寄宿舎を設置している使用者は、寄宿舎規則を作成して、労働基準監督署に届出をしなければなりません。寄宿舎規則を変更した場合も、労働基準監督署に届出が必要となります。使用者は労働者の私生活を侵してはいけませんが、寄宿舎規則の作成義務があります。

上記の5つの事項については、必ず記載しなければなりません。

2項 過半数代表者の同意

使用者は、前項第一号乃至第四号の事項に関する規定の作成又は変更については、寄宿舎に寄宿する労働者の過半数を代表する者の同意を得なければならない。

(条文解説)
寄宿舎規則の1号~4号を作成、変更する際は、寄宿する労働者の過半数代表者の同意を得なければなりませせん。5号の建物や設備は使用者が管理するものなので、同意の対象とはなりません。

3項 寄宿舎規則の同意書

使用者は、第一項の規定により届出をなすについて、前項の同意を証明する書面を添附しなければならない。

(条文解説)
使用者が寄宿舎規則を労働基準監督署に届け出る際は、過半数代表者が同意したことを証明する書面を添付しなければなりません。就業規則を届ける際には、意見書の添付で同意は必要ありませんが、寄宿舎規則は同意を得る必要があります。

4項 寄宿舎規則の遵守義務

使用者及び寄宿舎に寄宿する労働者は、寄宿舎規則を遵守しなければならない。

(条文解説)
使用者も寄宿舎に寄宿する労働者も、寄宿舎規則を遵守しなければなりません。

「寄宿舎生活の自治」法94条「寄宿舎規則の作成」法95条 まとめ

  • 社宅・社員寮と寄宿舎の違いは、事業経営の必要性があるか、プライベートな空間があるか
  • 使用者は、寄宿する労働者の私生活の自由を侵してはならず、寄宿舎規則の作成義務がある
  • 寄宿舎規則は、寄宿する労働者の過半数代表者の同意を得て、同意書を添付して労働基準監督署に届出が必要
卍室長

大規模な土木・建築現場の労働者用宿泊施設として飯場(はんば)があります。イメージとしてはプライベートな空間が無く、清潔感が無い傾向で使われることが多いです。寄宿舎生活と同様に、仕事以外の時間でも会社の人と顔を合わせるため、住宅費の負担が少なかったとしてもストレスに感じる人にはつらいです。

「寄宿舎生活の自治」法94条
「寄宿舎規則の作成」法95条 社労士試験過去問と解説

条文の内容を社労士試験過去問で復習します。過去の判例や事例を学ぶことで実務でも役立ちます。答えは「解答・解説を見る」の右側▲ボタンを押して確認してください。

【H21年出題】労働者の外泊
事業の附属寄宿舎に労働者を寄宿させる使用者は、事業の附属寄宿舎に寄宿する労働者の外泊について使用者の承認を受けさせることができる。

出典:社労士過去問ランド

【H21年出題】役員の選任
事業の附属寄宿舎に労働者を寄宿させる使用者は、事業の附属寄宿舎の寮長を選任しなければならない。

【H21年出題】寄宿舎規則:届出
事業の附属寄宿舎に労働者を寄宿させる使用者は、起床、就寝、外出及び外泊に関する事項、行事に関する事項、食事に関する事項、安全及び衛生に関する事項並びに建設物及び設備の管理に関する事項について寄宿舎規則を作成し、所轄労働基準監督署長に届け出なければならない。

【H21年出題】寄宿舎規則:同意
使用者が、事業の附属寄宿舎の寄宿舎規則を作成する場合には、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の同意を得なければならない。

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