【ブラック企業の特徴】労働基準法<上司・会社が決めたルールが優先

勤め先がブラック企業だと思う人が、その理由の第1位に挙げるのが「長時間労働」、その中の4割が「サービス残業」が当たり前と回答しています。
労働基準法では、1日の労働時間は8時間まで、それを超える残業の場合は25%の割増賃金を支払わなければならないと定めていますが、ブラック企業では法律を守ろうとする意識はありません。




違法行為も処罰されない?
日本には様々な法律が定められており、法に触れると罰則が与えられます。しかし、ブラック企業など多くの会社で長時間労働やサービス残業という違法行為が常態化しているにも関わらず、処罰されないという「社会的合意」があります。
また会社や上司が、遅刻に罰金を科すなど組織独自のルールを定め、その組織内では法律よりも優先されます。




中堅ブラック建設会社
現場監督 新卒 チャッピー
上司と職人との間の板挟みに苦しむ。




中堅ブラック建設会社
所長 M
裏金づくりで自宅を建てた。




中堅ブラック建設会社
主任 イワオ
力仕事が得意。
法律<組織のルール






自己渋滞で5分現場到着が遅れてしまいました。






はい罰金ー!遅刻とはけしからんっ!






就業規則では、会社の就業時間は8時~17時。残業はどれだけしても何も言わないくせに遅刻はめっちゃ怒って、罰金取るよな…






遅刻に怒ってんじゃねえぞ!俺様より遅く来るのがけしからん!






就業規則より、法律より、上司が決めたルールが絶対!
ブラック企業では「就業時間を守る」という就業規則(ルール)ではなく、上司が決めたルールや、職場の同調圧力に従わなければなりません。始業時間を過ぎる遅刻には罰金が科されますが、終業時間という概念は無く、上司が帰るまでエンドレスに仕事が続きます。
長時間労働が評価される






先月の労働時間のトップは…333hでぶっちぎりのイワオ!
連続出勤も55日で継続中だ。






小さいことを積み重ねるのが、とんでもないところへ行くただひとつの道だと思っています。






イチローの名言パクリ!






仕事はとくかくできないが、長時間労働・休日出勤を他の社員に示すモデル社員だ!






現場事務所で寝るか、スマホゲームのスタミナ消費してるだけのブラック社員!会社も社員も上司もブラック!
ブラック企業の経営者は、長時間労働・休日出勤を常態化することで利益を出しています。社員の評価基準には、【会社への忠誠心】【全国転勤可能】【無制限の残業可能】など、成果には全く関係の無い項目があります。
働く上でのルールは、会社が決めたルールではなく、「労働基準法」が基準です。
働く上でのルール「労働協約・就業規則・労働契約」




労働基準法以外にも、働く上で守るべきルールがあります。労働協約・就業規則・労働契約の3つで、それぞれの内容(条件)が異なる場合に、優先順位が決まっています。
優先順位は、労働基準法>労働協約>就業規則>労働契約となります。それぞれの内容を確認します。
- 労働協約
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労働協約とは、労働条件や団体交渉でのルールなどを記載し、使用者と労働組合との間で書面で締結します。適用を受けるのは、労働組合の組合員に限られますが、労働者の3/4以上が適用を受ける場合は他の労働者にも適用されます。
- 就業規則
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就業規則とは、労働条件の詳細や労働者が就業上守るべきルール等を定めた規則のことです。労働者を常時10人以上雇用している会社の場合は、就業規則の作成と届出が原則として義務付けられています。
なお作成した就業規則は、その事業場の労働者に周知させなければなりません。(労働基準法106条)
- 労働契約
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労働契約とは、採用の際に期間や労働時間等の労働条件を、使用者と労働者の間で取り交わされるものです。労働者に不利な条件になりやすいため、一番弱い効力となります。
労働条件を明らかにした文書である 「労働条件通知書」を労働者に交付し、労働者がそれを承諾した時点で、労働契約が成立したものとみなされます。労働契約については、「労働契約法」が平成20年から施行されています。
労働基準法では、1日の就業時間を8時間以内と決めていますが、A社の「就業規則」では、7時間45分と決まっていました。この基準に対して、使用者と労働組合が、1日の就業時間を7時間30分と決めれば、労働組合に加入している労働者は、その「労働協約」の規定が「就業規則」より優先されます。
「労働協約」で、1日の就業時間を8時間と決めれば、これも「就業規則」より優先されます。ただし、「労働協約」で、8時間を超える時間を決めることは、労働基準法違反となるためできません。
労働契約についても、内容が重複した場合は「労働協約」「就業規則」が優先されます。
以上の効力の強弱については、法92条で定められています。
労働基準法92条「就業規則と労働基準法の関係」条文




1項 就業規則と労働基準法の関係
就業規則は、法令又は当該事業場について適用される労働協約に反してはならない。
出典:労働基準法 | e-Gov法令検索
(条文解説)
就業規則は、労働基準法や労働協約で定められている範囲内で定める必要があります。就業規則は使用者が一方的に作成できますが、労働協約は使用者と労働組合の合意が必要になるため、就業規則より効力が強くなります。
2項 就業規則の変更命令
行政官庁は、法令又は労働協約に牴触する就業規則の変更を命ずることができる。
(条文解説)
労働基準監督署長は、労働基準法や労働協約に違反している就業規則の変更を命じることができます。
【ブラック企業の特徴】労働基準法<上司・会社が決めたルールが優先 まとめ
- ブラック企業だと思う理由の多くは、「長時間労働」、「サービス残業」が当り前の職場。
- 日本では、労働基準法違反が常態化していても、処罰されないという「社会的合意」がある。
- 労働条件が異なる場合の優先順位は、労働基準法>労働協約>就業規則>労働契約。
あるブラック企業の就業規則に、「従業員が会社の許可なく時間外労働・休日労働に出勤しても、労働の事実の確認ができない場合は、その賃金および割増賃金は支払わない。」という記載がありました。当然、労働基準法に違反している内容なので、無効となります。