就業規則に効力をもたせるには「労働者代表の意見聴取」が必要になる
就業規則を決めただけでは効力がありません。作成後に労働者の代表者から意見を聴き、その意見書を添付して労働基準監督署に届け出なければなりません。「意見を聴く」とは、文字通り意見を聴けば足りますが、「同意を得る」という意味ではありません。
労働者の代表者とは
労働者の代表とは、事業場の労働者の過半数を代表する者、または事業場で労働者の過半数が加入する労働組合があれば、その労働組合となります。いわゆる管理監督者は、代表者にはなれません。
労働者代表の適正な選出方法
労使協定を結ぶ際にも、労働者代表の選出しなければなりません。適正な選出方法とは、労働者の代表を決めることを明らかにしたうえで、立候補、投票、挙手による信任、話し合いなどの公正な手続きで選出しなければなりません。使用者が指名した者は認められません。
ブラック企業の常識「不適正な労働者代表選出」

卍室長が作成した就業規則に、意見書を付けなあかんのか。代表者を誰にするか。






部長、私労働者代表に立候補します!






当社の選任方法は、「神のお告げ」だ!






むむむ「イ・ワ・オ」と仰っている。イワオお前が代表者だ、この意見書に「異議なし」を書いておけ。






神のお告げ、ありがたき幸せ!スベテニシタガイマス、イギナシ、イワオ。






洗脳者代表決定!反対意見はゼロ!
就業規則作成・届出の手順
法89条で就業規則について定められており、次の手順にて作成・届け出が必要です。法90条は、ステップ③の意見聴取についての条文です。
労働者が10人以上の会社は、就業規則の作成義務があります。
作成については、法89条解説記事を確認してください。




作成後に労働者の意見を聴く必要があります。以下の条文にて確認してください。
労働基準監督署に届け出します。労働者の意見を記した、書面を添付しなければなりません。
「労働者代表の意見聴取」法90条の条文解説




使用者は、就業規則の作成又は変更について、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない。
(条文解説)
使用者が就業規則を作成・変更する場合は、労働者の過半数代表者の意見を聴かなければなりません。意見を聴くことが条件であるため、就業規則への反対意見があるなど、同意していなくても届け出ることはできます。
就業規則は、使用者が一方的に作成・変更するものなので、同意を得なくても無効にはなりませんが、反対意見が出た場合は、再度検討する方がよいでしょう。
使用者は、前条の規定により届出をなすについて、前項の意見を記した書面を添付しなければならない。
(条文解説)
就業規則を届け出る際に、労働者の過半数代表者の意見書を添付しなければなりません。
一部労働者に適用される就業規則
職場に正社員、パートなどの複数の雇用形態が混在していて、労働条件もそれぞれ異なることが多いものです。このような場合は、「正社員向け就業規則」「パート向け就業規則」などと雇用形態ごとに就業規則を作成することもできます。
「労働者代表の意見聴取」法90条 まとめ
- 就業規則は、労働者代表の意見を聴取し、その意見書を添付して届け出なければ効力を生じない
- 労働者代表には、管理監督者以外の労働者から公正に選出しなければならず、使用者が指名した者は認められない
- 正社員、パートなど雇用形態ごとに労働条件が異なる場合、それぞれに就業規則を作成することができる






36協定締結の際にも登場する、「過半数代表者の選出方法」に問題があったり、そもそも過半数代表者を選出していなかったりという場合でも、それが理由で就業規則自体が無効になるわけではありません。しかし、作成・変更の合理性などから、就業規則が無効であると判断されるケースもあり、労働基準法における罰則は免れません。
「労働者代表の意見聴取」法90条 社労士試験過去問と解説
労働基準法第90条第1項が、就業規則の作成又は変更について、当該事業場の過半数労働組合、それがない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴くことを使用者に義務づけた趣旨は、使用者が一方的に作成・変更しうる就業規則に労働者の団体的意思を反映させ、就業規則を合理的なものにしようとすることにある。
就業規則を作成又は変更するに当たっては、使用者は、その事業場に労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者の同意を得なければならない。
就業規則の作成又は変更について、使用者は、当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、それがない場合には労働者の過半数を代表する者と協議決定することが要求されている。
労働基準法第90条に定める就業規則の作成又は変更の際の意見聴取について、労働組合が故意に意見を表明しない場合又は意見書に労働者を代表する者の氏名を記載しない場合には、意見を聴いたことが客観的に証明できる限り、行政官庁(所轄労働基準監督署長)は、就業規則を受理するよう取り扱うものとされている。
同一事業場において、パートタイム労働者について別個の就業規則を作成する場合、就業規則の本則とパートタイム労働者についての就業規則は、それぞれ単独で労働基準法第89条の就業規則となるため、パートタイム労働者に対して同法第90条の意見聴取を行う場合、パートタイム労働者についての就業規則についてのみ行えば足りる。