UberEatsは労働者にならない?労働基準法の労働者の定義とは

コロナ流行の影響で、飲食店や小売店へのリアル店舗への来店頻度が減り、ネットショッピングや食品・飲食店からの配達需要が大幅に増えました。なかでも黒や緑のバックを背負い、自転車やバイクなどで食事のデリバリーをしている、Uber Eats(ウーバーイーツ)配達員をよく見かけます。
UberEats(ウーバーイーツ)配達員は労働者ではない




ウーバーイーツ配達員は、「好きな時に、好きなだけ働く」自由な働き方として注目を集めました。しかし配達員は、労働基準法で定める「労働者」ではないため、労働基準法の保護を受けない「個人事業主」という扱いです。
この記事では、労働基準法の適用(保護)を受ける、労働基準法9条「労働者の定義」について、わかりやすく解説します。さっそく、法律条文を確認してみましょう。
労働者の定義とは
労働者の定義
この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。
出典:労働基準法 | e-Gov法令検索
労働基準法では、使用者(会社)の指揮監督下にあって、賃金が支払われる者を労働者といいます。フリーランスなど請負契約の場合は、労働者に該当しませんが、注文主から指揮命令を受けている場合など、労働者と判断されることもあります。
・社員、アルバイト、パート
・上司の指示に従い働く店長(上司の意思伝達者であるため)
個人事業主は「働いた実績で報酬をもらう」完全出来高制
ウーバーイーツ配達員など個人事業主とは、発注者から仕事を委託され、実績に応じた報酬を受け取る「完全出来高制」で働く人です。ウーバーイーツの場合、仕事を紹介するウーバー社はあくまで仲介者であり、配達員との雇用契約が無いことが、労働基準法上の「労働者」との違いです。
個人事業主になるメリット、デメリットはこちらの記事で確認して下さい。




自由な働き方である個人事業主ですが、労働者にはない悩みもあります。
個人事業主(フードデリバリー)あるある
あるある①予想以上に経費がかかる






ようやく少し慣れてきたけど、スマホの充電はすぐ無くなるし、ガソリン代は高いし、予定していたより経費かかるなー。






このアプリのサブスク(有料版)を使ったら、案件を取りやすくなるぞ!






先月も違うアプリ進めてたけど、使いにくいし、すぐにサービス終了したけど…
個人事業主の場合すべてを自分で用意する必要がある。配達車両の故障などで急な出費、スマホの使用頻度も高いので、通信費も含め何かと必要経費がかかる。
あるある②デリバリー加盟店情報に精通する






こんにちはー、「無限イーツ館」の番号5555です。






お疲れ様。いつも頑張っているから“エナジードリンク”






身体も心も全回復!後でランチきます!
フードデリバリー加盟店での対応は様々。お客として来店するときには見せない、店の裏の顔が見える。良い印象のお店には、昼食やプライベートでも利用する。
あるある③突然の報酬体系変更






原料が高騰してるから、配達員の報酬体系を見直した!明日からこれで行くからなー。






突然の報酬体系の改悪!ただでさえ不安定なのに、原料の高騰ってナニ??






キャンペーン打ちまくりで広告宣伝費がかかってしょうがない。配達員を安くこき使わないとな…
報酬体系の改定による実質的な収入低下、他の配達員の増減やプラットフォームのキャンペーンの有無などで、収入が不安定。これからのサービスが続くかが不安でいっぱい。
あるある④保証が無い






配達の時にコケて手首を痛めた!これじゃあ配達ができない…






おっせーんだよ!ラーメンのびるじゃねえか。ったく使えねーな!






客には愛想いいけど、配達員やバイトにも当たりがキツい。ここには食べに行かない!
仕事中のケガで仕事ができなくなっても、休業補償が無い。労災保険も無いため、治療費の負担も重くのしかかる。認知度が低いが、特別に労災保険に任意加入が認められる労災保険の特別加入制度がある。
労働者・個人事業主、働く人とお金を払う人との関係が違う
「労働者」と「個人事業主」では、働いた場合に払うお金の呼び方と、払う人との関係が違います。
- 労働者の場合
-
労働者は、使用者に労働の提供を行い、使用者は見返りとして、賃金を支払います。賃金は働く時間や日数に応じて計算され、働く時間当たりの単価は最低賃金が決められいるなど、最低保障があります。
もらうお金:賃金と呼ぶ(最低保障がある)
お金を払う人:使用者(雇用関係がある)労働者派遣の場合は、原則として派遣元が使用者となりますが、労働時間や休憩、休日に関しては、派遣先が使用者となります。
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個人事業主は、使用者の立ち位置なので、「どれだけ働いたか」ではなく、「どれだけ実績を出したか」で受け取るお金(報酬)が変わります。
もらうお金:報酬と呼ぶ(完全出来高制)
お金を払う人:発注者・仲介者(雇用関係がない)
労働者には義務がある




労働者には、労働力を提供する以外に、以下の義務があります。
- 誠実労働義務
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使用者の命令に従い、誠実に働かなければならない。
- 秘密保持義務
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在職中は、営業上の秘密を守らなければならない。
- 競業避止(きょうぎょうひし)義務
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在職中は、会社と同じような事業をしてはならない。
- 職務専念義務
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仕事中は、職務のみに専念しなければならない。
UberEatsは労働者にならない?労働基準法の労働者の定義とは まとめ
- UberEats配達員は、労働者ではなく個人事業主であり、労働基準法の適用が受けられない
- 個人事業主は「働いた実績で報酬をもらう」完全出来高制の働き方
- 「労働者」と「個人事業主」では、働く人とお金を払う人との関係が違う
労働基準法9条「労働者の定義」社労士試験過去問と解説




条文だけでは、いまいち理解できないことが多いので、社労士試験の過去問で復習しましょう。
※答えは「解答・解説を見る」▼を押して確認してください。
形式上は、請負契約のようなかたちをとっていても、その実体において使用従属関係が認められるときは、当該関係は労働関係であり、当該請負人は労基法9条の「労働者」に当たる。
出典:社労士過去問ランド
労働基準法でいう「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業または事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいい、法人のいわゆる重役で業務執行権または代表権を持たない者が、工場長、部長の職にあって賃金を受ける場合は、その限りにおいて法9条に規定する労働者である。
出典:社労士過去問ランド
労働基準法に定める「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業または事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいい、この定義に該当する場合には、いかなる形態の家事使用人にも労働基準法が適用される。
出典:社労士過去問ランド
いわゆる芸能タレントは、「当人の提供する歌唱、演技等が基本的に他人によって代替できず、芸術性、人気等当人の個性が重要な要素となっている」「当人に対する報酬は、稼働時間に応じて定められるものではない」「リハーサル、出演時間等スケジュールの関係から時間が制約されることはあっても、プロダクション等との関係では時間的に拘束されることはない」「契約形態が雇用契約ではない」のいずれにも該当する場合には、労働基準法第9条の労働者には該当しない。
出典:社労士過去問ランド
いわゆるインターンシップにおける学生については、インターンシップにおいての実習が、見学や体験的なものであり使用者から業務に係る指揮命令を受けていると解されないなど使用従属関係が認められない場合でも、不測の事態における学生の生命、身体等の安全を確保する限りにおいて、労働基準法第9条に規定される労働者に該当するとされている。
出典:社労士過去問ランド






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