労働基準法の適用単位「事業場」適用されない「適用除外」とは

日本が将来直面する「生産年齢人口の減少」の対策として、働き方改革が進められています。目標のひとつに、兼業・副業・フリーランスなど、多様な働き方を進め、労働力を確保しようとしています。
フリーランスなどの働き方は、「時間・場所・契約にとらわれない、柔軟な働き方」として、注目されますが、労働基準法などの法律の適用が受けられないという問題があります。
ブラック企業は労働基準法の適用や、罰則を逃れようとします。こちらの記事も確認して下さい。




労働基準法の適用を受けるとは、どのようなことなのでしょうか?この記事では、適用を受ける「事業場で雇用されている人」と、適用を受けることができない「適用除外」について、わかりやすく解説をしていきます。






管理人は、ブラック企業歴25年・社労士試験を受けようと思ってのは10年前…。勉強がまったく捗らないときに考えたのが、
「ブラック企業あるあると、法律を関連付けて記憶する!」勉強法です。
日々試行錯誤しながら、学習しております。
適用事業の範囲を規定していた内容である法8条が、平成10年の改正で適用事業の範囲を号別に列記する方式が廃止することとされ、法8条としては削除されました。
労働基準法の適用単位である「事業場」




労働基準法では、労働者を一人でも雇用する事業場が適用されると定められ、労働安全衛生法でも同じように定められています。
事業場=会社ではなく、例えば、就業規則は同じ会社でも本社や工場・営業所など、それぞれで作成して届出の必要があるので、事業場とは適用の「単位」であるといえます。
「事業場」の判断項目
具体的に事業場の概念は、以下の項目で判断されます。
- 場所的に独立
-
工場、事務所、店舗等、場所的に他の事業所その他の場所から独立していること
- 独立性(規模)
-
経営の単位として人事、経理、指導監督、労働の態様等において、ある程度の独立性を有すること
- 継続性の有無
-
一定期間継続し、施設としての持続性を有すること
出張所・支所等で、規模が小さいもの、一つの事業場という程度の独立性がないものについては、直近上位の組織に包括して全体を一つの事業場として取り扱うとされています。




上の図であれば、すべて事業場として扱われます。しかし、最下位組織である「営業所」「店舗」「診療所」が判断項目である、規模が小さいなど条件に該当しない場合は、上位組織に包括され一事業場としての扱いになります。
ある会社では東京に本社があり、大阪に支社、福岡に工場があります。この場合同じ会社でも、3つの事業場として扱います。
労働基準法の適用を受けることのできない「適用除外」




続いて労働基準法の適用を受けることができない「適用除外」についてです。適用除外とは、「法律の内容を適用しない」という意味なので、ここで紹介するのは労働基準法の保護を受けられない働く人のことです。
労働基準法では原則、正社員だけでなく、契約社員、派遣社員、パート、アルバイトなど、雇用形態を問わず適用を受けますが、以下の4つのケースは適用除外となります。
適用除外① 同居の親族のみを使用する事業または事業場
家族のみの会社であり、使用者と労働者との間の明確な線引きができないため、労働基準法は適用されません。同居の親族以外の労働者が、一人でもいれば適用となります。
適用除外② 家事使用人
家族(家庭)の指揮命令のもとで家事一般に従事する者を家事使用人といいます。仕事内容が家事全般であり、どれだけ働きどれだけ休憩したのかがはっきりしないため、労働基準法の適用外となっています。ただし、法人に雇われ各家庭に派遣される、家事代行サービス等は適用されます。
適用除外③ 一般職の国家公務員




国家公務員には労働基準法の適用がなく、地方公務員にも同法の一部が適用されません。これは、公務員が一斉に有給休暇を取得し役所が機能しなくなる場合など、公務員の職務の公共性を考慮し、私たちの生活に支障が生じるのを避けるためです。
例外として、3現業は適用があります。
適用除外④ 船員
船員についても、原則として労働基準法の適用がありません。これは、船員が「船上での生活」という使用者に24時間拘束されているに近い特殊な状況にあり、同法を適用する基礎を欠くためです。
「労働基準法の適用事業・適用除外」まとめ
- 労働基準法で適用される単位は、会社ではなく、事業場という概念
- 事業場の定義は、①場所的に独立 ②独立性(規模がある) ③継続性の有無 で判断される
- 同居の親族、公務員、家政婦、船員、個人事業主(フリーランス)は労働基準法が適用されない
「労働基準法の適用事業・適用除外」社労士試験過去問と解説




条文だけでは、いまいち理解できないことが多いので、社労士試験の過去問で復習しましょう。
※答えは「解答・解説を見る」▼を押して確認してください。
H26年出題 適用単位
労働基準法第9条にいう「事業」とは、経営上一体をなす支店、工場等を総合した全事業を指称するものであって、場所的観念によって決定されるべきものではない。
出典:社労士過去問ランド
H29年出題 同居の親族のみを使用する事業
同居の親族は、事業主と居住及び生計を一にするものとされ、その就労の実態にかかわらず労働基準法第9条の労働者に該当することがないので、当該同居の親族に労働基準法が適用されることはない。
H29年出題 家事使用人
法人に雇われ、その役職員の家庭において、その家族の指揮命令の下で家事一般に従事している者については、法人に使用される労働者であり労働基準法が適用される。