【ブラック企業の特徴】労働基準法の適用から免れるため社員を減らす

ブラック企業が、残業代や休日出勤に対しての割増賃金を支払わないのは、従業員を「安くこき使う」ためです。
現在では、ブラック企業という言葉が一般的となり、労働基準法違反の常態化が社会問題化しています。そのような背景から、新たな人件費抑制の手段を考える動きがあります。
社員をフリーランス・ギグワークに転換する
それは、社員をフリーランスに転換するなど、労働基準法の適用から免れるため社員を減らす方法です。社員を減らした分の仕事の発注先は、フリーランス以外にギグワークと呼ばれる人も増えてきています。
フリーランス、ギグワークとは
フリーランス・ギグワークという働き方が増えた理由の一つに、政府の働き方改革である「多様な働き方」の普及、推進があります。それぞれの定義を確認します。
- フリーランスとは
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会社や組織に属することなく、個人で仕事を請け負う働き方のことです。具体的な職種としては、ITエンジニア、WEBデザイナー、コンサルタント、YouTuber、ブロガーなどです。主にプロジェクト単位で仕事を請け負うため、一定期間は時間を拘束されます。
- ギグワークとは
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フリーランスと同様に、会社との雇用契約を結ばずに、単発の仕事を請け負う働き方です。フリーランスに比べ、部分的な作業を請け負い、スキマ時間に働く自由度の高さが魅力です。
また特徴として、「オンラインプラットフォーム」を利用する点があります。具体的な職種は、UberEats配達員やオンライン講師などです。
契約だけ業務委託契約の「名ばかりフリーランス」




ブラック企業の手法は、新たにフリーランスなどへを発注先として増やすのではなく、社員を転換させていくことです。実態は労働者であるにも関わらず、契約だけ業務委託契約を結び、労働基準法の適用を免れようとします。
ブラックな「社内フリーランス制度」






毎日終電の日々、週3で会社に泊まる…疲れがたまって頭が働かない。






お疲れの君に新しい制度を提案しよう。社内フリーランス制度「自由☆ワークプラン」た。来月から君はフリーランスだ!






フ、フリーランス…フリーということは、今より少しはマシになるのかな…
ヒラ社員は退職してフリーランスになった。






フリーランスになったけど、何も変わっていない…業務量は多いし、部長からの納品期限や営業ノルマの圧力も変わらず。






今月残業代がついていない!休日出勤も、深夜手当も!






素晴らしい制度だ「自由☆ワークプラン」。残業代分の人件費が浮きまくりだ。
雇用関係を解消することで、労働者ではなくなり労働基準法が適用除外になります。そうなると、残業時間も休憩も休日出勤も、そして深夜勤務も関係ありません!関係ないということは、割増賃金は発生しないということです。
このような方法で、ブラック企業は労働基準法の適用や、罰則を逃れようとします。つまり、
「社内フリーランス制度」=働かせ放題プラン
ということです!しかし、契約上業務委託契約になっていても、実態が社員であったときと変わらないのであれば、実質的には労働者と判断されます。労働者と判断されれば、労働基準法の適用を受けられるということです。
社員のフリーランス化のメリット・デメリット




ブラック企業の「名ばかりフリーランス」ではない、社員のフリーランス化のメリット・デメリットも確認しましょう。
大きなメリットは人件費抑制
労働基準法の適用を免れることによる残業代の負担が無くなる以外にも、人件費抑制が主なメリットです。
- 雇用保険・労災保険などの労働保険と社会保険の負担が無くなる
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年収360万円の社員一人にかかる、会社負担の保険料は約52万円。一人ではなく複数となるとかなりの金額負担の軽減になります。社内の業務を外注する理由の一つです。
- 労務管理や給与計算の手間が無くなる
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社員の場合、毎月の給与計算、年末調整や保険料の計算、源泉徴収など、管理部門の負担が大幅に減ります。そのため、管理部門の人件費を抑えることにも繋がります。
最大のデメリットは品質低下
逆にデメリットは以下です。
- 品質の低下する可能性がある
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委託委託者との使用従属性がないため、業務の質を管理することができません。業務委託者によっては、品質のバラつきや、低下するかもしれません。
- 委託先が見つからない
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社員に仕事を割り振るわけではないため、外注時、希望する条件で、引き受けてくれるかが不明です。世の中の動向などで、委託業者が見つからない、委託料が予定よりも高額なるという不安があります。
- ノウハウが蓄積されない
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同じような仕事が発生しても、外注に頼る場合は、社内にノウハウや経験が蓄積しません。継続性のある業務などは長期的には、外注費がかなり割高になるかもしれません。
また社員をフリーランスではなく、取締役にすることで社員を減らす事例もあります。
社員の取締役化






講義が終わっても、模試の結果を分析したり、授業の予定を立てたり忙しいな…






チャッピー、全然生徒獲得できてねーじゃん!やる気あんのか?






すいません…毎日チラシ配りをしていますが、成果が…






言い訳はいーから、結果出せよ!
生徒人数を増やすノルマが重く、生徒の成績が下がれば文句を言われる…そんな厳しい毎日を過ごしていたある日。






わが社は、社員いえども会社運営に関与しているため、全社員を取締役にする!






えっ!ということは給料が増えるということですか?
(こんな低賃金、長時間労働では続かない…)






いや、取締役になるだけで、他は何一つ変わらないし、今後も変えることはない!






なんという試練!
この事例は、進学塾「類(るい)塾」を経営する会社が、社員(講師)の大半を取締役に就かせ、残業代を支払わないという暴挙でした。さすがにこれはやりすぎです。
労働基準法の適用から免れるため社員を減らす まとめ
- 労働基準法の適用から免れるために、社員をフリーランス・ギグワークに転換する
- 実態は労働者にも関わらず、契約だけ業務委託契約を結ぶ名ばかりフリーランスに注意
- 社員のフリーランス化はメリットばかりではなく、品質低下などデメリットもある
労働基準法の適用を受ける「事業場で雇用されている人」と、適用を受けることができない「適用除外」については、こちらの記事で解説しています。



