労働基準法6条「中間搾取の排除」労働者派遣、職業紹介の違いとは

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労働基準法6条「中間搾取の排除」労働者派遣、職業紹介の違いとは

この記事では、労働基準法6条「中間搾取の排除」について、わかりやすく解説します。中間搾取とは、いわゆるピンハネのことです。こちらの記事でくわしく解説していますので、確認してください。

中間搾取、労働者派遣、職業紹介(転職エージェントなど)は、働く人(労働者)、雇う人(使用者)、仕事を紹介(あっせん)する人の3者が関わる点は同じですが、適用される法律や雇用関係の有無などが違います

適用される法律雇用関係許認可
中間搾取労働基準法労働者と使用者禁止
労働者派遣労働者派遣法労働者と派遣元の会社労働者派遣事業
有料職業紹介職業安定法労働者と使用者有料職業紹介事業

まずは法6条を条文で確認しましょう。

法6条はピンハネ禁止の条文

中間搾取の排除

何人も、法律に基いて許される場合の外、として他人の就業に介入して利益を得てはならない。

出典:労働基準法 | e-Gov法令検索

労働基準法では、他人の就業に介入して、利益(紹介料や手数料、有形・無形問わず)を受け取ることを禁止しています。ただし労働者派遣職業紹介(有料職業紹介)は、国の許可を受け定められた法律を守ることで認められます。

業として他人の就業に介入とは
事業(仕事)として、労働者・使用者の間に第三者が入り、就業の斡旋や紹介を行うことをいいます。

中間搾取の定義

労働基準法で定義されている中間搾取とは、労働者と使用者の間で直接交わされるべき雇用契約に介入して、どちらかから謝礼を受け取ったり、賃金の一部を先取りすることです。

中間搾取の事例

中間搾取の具体例としては、配下の労働者を他社で働かせて、その会社から受け取った代金の一部をピンハネして、労働者に賃金を支払うことなどが該当します。

また図のように、派遣労働者が派遣契約を結んでいる派遣先ではない会社の、指揮命令を受ける場合も中間搾取となり、「二重派遣」と呼ばれます。

二重派遣はこうして発生

派遣や委任・委託、請負現場では二重派遣のような事例はよくあります。

派遣先担当

日用品の入荷が遅れちゃってるから、違う作業してもらえるかな?イイよね?イイよね!?

派遣労働者

わ、わかりました。

派遣労働者は、契約している派遣先とは別の会社(注文主など)に連れていかれた…

派遣労働者

今日の仕事、日用品の仕分け作業って聞いてたのに、別の業者に連れていかれて、荷降ろしさせられた!

派遣元幹部

なぬ!無断で違う作業をさせるとは。派遣先には2倍の派遣料金を請求しておけ!

派遣元社員

お金の問題ではなく、法律違反では!?

このように派遣契約をしている会社(派遣先)ではなく、別の会社(注文主など)の指示のもとで作業を行うことが二重派遣です。この場合は、再派遣を行った派遣先の会社が罰則を受けます。

また職業安定法にも抵触し、派遣先の会社再派遣を受け入れた会社が罰則を受けますが、派遣会社(派遣元)への罰則はありません。

続いて労働者派遣・紹介、それぞれの定義と中間搾取との違いを確認します。

労働者派遣は派遣会社と雇用関係

労働者派遣は、労働者が派遣元の会社と雇用契約を結び、就業先である派遣先の会社の指揮命令を受けて仕事をするのが特徴です。

中間搾取の場合、仕事を紹介する人(ピンハネする人)と労働者の間に、雇用関係は無く「支配従属関係」が成立していることがほとんどです。親分と逆らうことができない手下の関係です。

労働基準法は、原則として労使二者間(労働者と使用者)で想定し各種規定を定めています。そのため労働者派遣を行う場合は、別の法律である労働者派遣法を定めています。労働者派遣を行うには、厚生労働省の認可が必要となります。

労働者派遣は中間搾取にはならない

労働者派遣は、派遣元と派遣労働者の間で労働契約を締結します。そのため、他人の就業に介するものではないと解釈され、中間搾取には該当せず、法6条違反にはなりません。

有料職業紹介は紹介先企業から手数料

有料職業紹介は、中間搾取と同じく労働者と雇用契約は結ばず、手数料をもらうビジネスモデルです(ハローワークなどは無料職業紹介)。

中間搾取との違いは、以下の3つです。

  1. 労働者からは原則手数料を取らず、紹介先企業から紹介手数料をもらう
  2. 事業を行うには、厚生労働大臣の許可が必要
  3. 手数料の上限など、職業安定法に定められた範囲で事業を行う

転職エージェントなど有料職業紹介事業者(以下、紹介元)は、厚生労働大臣の許可を受けて仕事を紹介するという点は、労働者派遣事業と同じです。異なる点としては、紹介元は、労働者との雇用関係が無いことです

労働者は紹介先企業と雇用契約を結び、就業します。その際に紹介元は、紹介料や手数料を受け取ることが認められていますが、法律(職業安定法等)に定める料金等を超えて、紹介手数料を受け取ると違反となります。

労働基準法6条「中間搾取の排除」労働者派遣、職業紹介の違いとは まとめ

  • 中間搾取の排除」とは、労働者・使用者以外の第三者が介入し、賃金ピンハネすることを禁止した条文
  • 労働者派遣は派遣元と派遣労働者で雇用関係があるため中間搾取にはならず、法6条違反ではない
  • 有料職業紹介労働者から手数料(ピンハネ)は取らず、紹介先企業から手数料をもらう

労働基準法6条「中間搾取の排除」社労士試験過去問と解説

条文だけでは、いまいち理解できないことが多いので、社労士試験の過去問で復習しましょう。
※答えは解答・解説を見る」▼を押して確認してください。

H26年出題 処罰対象

労働基準法6条は、業として他人の就業に介入して利益を得ることを禁止しており、その規制対象は、使用者であるか否かを問わないが、処罰対象は、業として利益を得た法人または当該法人のために実際に介入行為を行った行為者たる従業員に限定される。

出典:社労士過去問ランド
H29年出題 業の意義

労働基準法第6条は、法律によって許されている場合のほか、業として他人の就業に介入して利益を得てはならないとしているが、「業として利益を得る」とは、営利を目的として、同種の行為を反覆継続することをいい、反覆継続して利益を得る意思があっても1回の行為では規制対象とならない。

出典:社労士過去問ランド
R2年出題 利益の意義

労働基準法第6条に定める「何人も、法律に基いて許される場合の外、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない。」の「利益」とは、手数料、報償金、金銭以外の財物等いかなる名称たるかを問わず、また有形無形かも問わない。

出典:社労士過去問ランド
H28年出題 規制対象

労働基準法第6条は、法律によって許されている場合のほか、業として他人の就業に介入して利益を得てはならないとしているが、その規制対象は、私人たる個人又は団体に限られ、公務員は規制対象とならない。

出典:社労士過去問ランド
この記事を書いた人
かんりにん

ブラック企業歴25年
「ブラック企業あるある」を反面教師に、法律を学べるかも!他の記事もヒマがあれば読んでください。

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