「妊産婦の就業制限」請求をした場合は時間外・休日・深夜労働が禁止

最近では、男女差別を無くそうという風潮が高まっています。以前は同じ仕事をしていても、保育士のことを保母・保父、看護師のことを看護婦・看護士と呼んでいました。仕事以外でもジェンダーレスの動きは加速しています。
男女雇用機会均等法の成立により、女性労働者への規制が無くなりましたが、妊産婦にとっては、それが負担になることもあります。法66条では、妊産婦本人が「請求した場合」使用者は時間外労働、休日労働、深夜業をさせることができないと定められていますが、法65条で登場した「医師の判断」は必要ありません。
ブラック企業の常識「都合のいいジェンダーレス」






今日は「ブラックフライデー」金曜日はエンドレスで残業だ!






揚げすぎたフライ!?がんばるぞー!






すいませんが、妊娠しているため残業・深夜勤務は極力控えたいですが…






なにっ!わが社は男女平等!ジェンダーレスを社是に掲げている。公平に業務を行わなければならない!






母子健康管理・母性保護と、男女平等を一緒にすんじゃねーよ!こうゆう理解不能者がいるから女性が働きにくいんだよっ!






帰りますー
「妊産婦と変形労働時間制」法66条 条文解説




1項 妊産婦と変形労働時間制
使用者は、妊産婦が請求した場合においては、第三十二条の二第一項、第三十二条の四第一項及び第三十二条の五第一項の規定にかかわらず、一週間について第三十二条第一項の労働時間、一日について同条第二項の労働時間を超えて労働させてはならない。
出典:労働基準法 | e-Gov法令検索
(条文解説)
妊産婦が時間外労働をしたくないと申し出た場合は、変形労働時間制を採用していたとしても、時間外労働(週40時間、1日8時間を超える労働)をさせることができません。妊産婦とは、妊娠中(産前6週間)・産後1年を経過しない女性です。
変形労働時間制は以下の3つです。請求が無い場合は、時間外労働をさせることができます。また、フレックスタイム制は対象外です。
- 32条の2 1カ月単位の変形労働時間制
- 32条の4 1年単位の変形労働時間制
- 32条の5 1週間単位の変形労働時間制
2項 妊産婦の残業
使用者は、妊産婦が請求した場合においては、第三十三条第一項及び第三項並びに第三十六条第一項の規定にかかわらず、時間外労働をさせてはならず、又は休日に労働させてはならない。
(条文解説)
妊産婦が申し出た場合は、36協定を締結していても、時間外労働や休日労働をさせることができません。また法33条の災害時や、公務員の例外規定も適用外となり、時間外労働・休日労働をさせることができません。休日労働とは、週1日の法定休日を与えることなく働かせることです。
法41条に該当する者(監督又は管理の地位にある者)
妊産婦のうち、法41条に該当する者(監督又は管理の地位にある者)については、労働時間に関する規定が適用されないため、法66条1項、2項の規定が適用されません。つまり時間外労働又は休日労働をさせることができます。
3項 妊産婦の深夜労働
使用者は、妊産婦が請求した場合においては、深夜業をさせてはならない。
(条文解説)
1、2項と同様に、妊産婦が申し出た場合は、深夜労働もさせることができません。法41条に該当する者(監督又は管理の地位にある者)も深夜労働のみ、請求した場合は就業が禁止されます。
「妊産婦と変形労働時間制」法66条 まとめ
- 妊産婦が「請求した場合」は時間外労働、休日労働、深夜業をさせてはならない
- 請求した場合は、変形労働時間制を採用していたとしても、時間外労働させてはならない
- 法41条該当者(管理監督者)は、深夜労働のみ請求した場合に就業が禁止






男女平等とは、「男女同じにしなければならない」というものではありません。男性でも家庭を重要視する人もいれば、女性で仕事を優先したい人もいます。男性だから、女性だからという固定観念を無くして、男女ともに働きやすい職場づくりをすることが大切です。
「妊産婦と変形労働時間制」法66条 社労士試験過去問と解説
条文の内容を社労士試験過去問で復習します。過去の判例や事例を学ぶことで実務でも役立ちます。
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H29年出題 就業制限:時間外労働・休日労働
使用者は、すべての妊産婦について、時間外労働、休日労働又は深夜業をさせてはならない。
出典:社労士過去問ランド
H20年出題 就業制限:管理監督者
使用者は、労働基準法第36条第1項に基づく労使協定が締結されている場合であっても、妊娠中の女性及び産後1年を経過しない女性が請求した場合においては、同法第41条各号に掲げる者である場合を除き、時間外労働又は休日労働をさせてはならない。
H17年出題 就業制限:管理監督者、深夜業
使用者は、労働基準法第66条第2項及び第3項の規定により、妊娠中の女性及び産後1年を経過しない女性(以下「妊産婦」という。)が請求した場合においては、同法第33条第1項及び第3項並びに第36条第1項の規定にかかわらず、時間外労働、休日労働又は深夜業をさせてはならないが、同法第41条第2号に規定する監督又は管理の地位にある妊産婦については、時間外労働、休日労働及び深夜業をさせることができる。