18歳未満は夜勤禁止「年少者の深夜労働の制限」法61条の解説

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18歳未満は夜勤禁止「年少者の深夜労働の制限」法61条の解説

労働基準法では、18歳未満の夜勤(22時~翌5時)は禁止されています。高校生で18歳の誕生日を迎えると、法律上は夜勤が可能になりますが、校則で禁止されていたり、勤務先企業で採用を控えるケースが多いため、高校卒業後でないと難しいでしょう。

また都道府県育成条例により、18歳未満は深夜帯(時間帯は都道府県により異なる)に、カラオケやネットカフェなど外出禁止されています。これらの目的は、年少者の健康維持と学業専念のためです。

ブラック派遣会社の常識「年少者の深夜勤務は適用除外」

勇者もょもと(16歳)は、学校が休みの週末に派遣先の飲食店で勤務していた。

勇者もょもと

22時以降も店が忙しくて、22:30まで延長してしまった…22時以降残ったらまた給料カットされるのかな?

M部長

おお、勇者もょもと!深夜勤務してしまうとはなにごとだ!チャッピー派遣先には、3倍の派遣料金を請求しておけ!もょもと、22時以降働いては駄目だと契約書に書いてあるだろ!

チャッピー

雇用契約書に深夜勤務禁止の但し書きを追加したのは、前回の残業した後だ…

M部長

もょもと、契約違反の罰則として22時以降働いた分はカットだ!チャッピー、仕事内容を「飲食店で野菜の盛り付け作業」から、「農家で野菜の収穫・出荷作業」に訂正しておけ!

勇者もょもと

また給料カット…学校の先生に相談してみよう…

チャッピー

飲食店のキッチン作業を、年少者の深夜労働の適用除外である「農業」に改ざんするとは…!なんという力業!さすがブラック企業の幹部。改ざんの実行犯はあくまで俺!

「年少者の深夜労働の制限」法61条 条文解説

1項 年少者の深夜労働の制限

使用者は、満十八才に満たない者を午後十時から午前五時までの間において使用してはならない。ただし、交替制によつて使用する満十六才以上の男性については、この限りでない。

出典:労働基準法 | e-Gov法令検索

(条文解説)
年少者は、午後10時から午前5時までの深夜の時間帯は労働させることができません。例外として、16歳以上の男性労働者は交替制であれば勤務させることができます。交替制の場合は特に許可などは必要ありません。

交替制とは
需要に対応するために24時間稼働している工場などでの勤務形態です。主に「二交替制」と「三交替制」の2つがあり、労働時間を分けて、複数の労働者を交替で勤務させます。シフト制とも言います。

この例外規定については、同一労働者が一定期日ごとに昼間勤務と夜間勤務に交替につく勤務形態を想定しています。

2項 年少者の深夜労働時間の延長

厚生労働大臣は、必要であると認める場合においては、前項の時刻を、地域又は期間を限つて、午後十一時及び午前六時とすることができる。

(条文解説)
第1項の例外規定となります。厚生労働大臣の許可を得た場合、地域又は期間を限定することにより、深夜労働の時間帯を午後11時から午前6時とすることができます。

3項 年少者の深夜労働の許可

交替制によつて労働させる事業については、行政官庁の許可を受けて、第一項の規定にかかわらず午後十時三十分まで労働させ、又は前項の規定にかかわらず午前五時三十分から労働させることができる。

(条文解説)
交代制での勤務形態の会社で、労働基準監督署の許可を得た場合、午後10時30分までの勤務をさせることができ、第2項の深夜労働の時間帯を午後11時~午前6時までとしている場合は、午前5時30分からの勤務をさせることが可能になります。第1項の交替制とは意味が異なり、こちらは許可が必要となります。

例)早番:午前5時~午後1時45分
  遅番:午後1時45分~午後10時30分
の交代制で、遅番で労働させる場合など

交替」と「交代」の違い
「交替」とは、ある同じ働きをする人を他の人に入れ替えるときに使い、「交代」には役目を入れかえて、後の人がそのまま引き継ぐというニュアンスが含まれるという違いがあります。どちらも同じような意味で使っていますが…。

4項 年少者の深夜労働の例外

前三項の規定は、第三十三条第一項の規定によつて労働時間を延長し、若しくは休日に労働させる場合又は別表第一第六号、第七号若しくは第十三号に掲げる事業若しくは電話交換の業務については、適用しない

(条文解説)
以下の項目は年少者であっても適用されます。

  • 法33条 災害時の時間外労働等
    非常災害時の時間外労働、休日労働、深夜労働。
  • 農林業、水産・養蚕・畜産業、保健衛生業、電話交換業務の業種は、適用除外となる
    上記は、深夜労働・時間外労働・休日労働ともに労働させることができます。

農林水産業、畜産・養蚕業は、自然を相手にするという性質から、保健衛生業は公衆の不便を避けるという理由により、適用が除外されています。

保健衛生業とは
具体的な事業所でいうと、社会福祉法人、医療法人、福祉施設、知的障害施設、福祉相談センター、保育所、健康センター、医療センター、リハビリセンター、病院、保健所、診療所、歯科医院など。

法61条の電話交換の業務とは
企業の中の電話交換手(取り次ぎ業務)ではなく、NTTなどでハード面の電話交換の業務を、24時間体制で行う場合を指しています。今では機械化されているので、このような業務は見られません。

5項 児童の深夜労働の制限

第一項及び第二項の時刻は、第五十六条第二項の規定によつて使用する児童については、第一項の時刻は、午後八時及び午前五時とし、第二項の時刻は、午後九時及び午前六時とする。

(条文解説)
労働基準監督署の許可を受けて労働する児童については、原則午後8時から午前5時までが深夜の時間帯となり、勤務させることができません。例外として、演劇の子役など厚生労働大臣が認めたときは、午後9時から午前6時までが深夜の時間帯となります。

「年少者の深夜労働の制限」法61条 まとめ

  • 年少者(18歳未満)は、午後10時から午前5時までの深夜時間帯は労働させることができない
  • 18歳になれば深夜労働は法律上可能だが、校則で禁止・勤務先で採用不可など、就業機会はあまりない
  • 許可を受けて労働する児童(中学生以下)は、午後8時から午前5時までが深夜労働となり、労働させることができない
卍室長

年少者の労働者と言えば、高校生アルバイトがほとんどです。労働基準法上の年少者の制限の代表的なものが、残業・夜勤禁止です。以前に比べると法令順守の意識が高まっており、高校生アルバイトは20時~21時の時間で終了するシフトを組み、法律違反にならないようにする会社が多くなっています。

「年少者の深夜労働の制限」法61条 社労士試験過去問の解説

条文の内容を社労士試験過去問で復習します。過去の判例や事例を学ぶことで実務でも役立ちます。
答えは解答・解説を見る」 ▼を押して確認してください。

H23年出題 原則

満15歳に達した日以後の最初の3月31日が終了するまでの者について、労働基準法第56条による所轄労働基準監督署長の許可を受けて使用する場合には、午後8時から午前5時まで(厚生労働大臣が必要であると認める場合に地域又は期間を限って午後9時から午前6時までとする場合には午後9時から午前6時まで)の間は使用してはならない。

出典:社労士過去問ランド

H16年出題 演劇の事業

使用者は、演劇の事業に使用する満13歳に満たない児童(いわゆる子役)については、行政官庁の許可を受けて、その者の修学時間外において、午後10時まで使用することができる。

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