高校生アルバイト18歳未満は残業禁止「年少者の労働時間の制限」

コンビニや飲食店など、慢性的な人手不足の業界では、高校生アルバイトの採用・戦力化が必要不可欠です。しかし、年少者は保護年齢であるため、労働基準法の適用が除外される項目があり、これを知らずに違反してしまうケースが見られます。
法60条は「18歳未満は残業禁止」という条文です。使用者だけが知っていても、他の労働者が知らずに同じように残業してしまわないよう、職場でも共有していかなければなりません。
ブラック派遣会社「年少者が残業したらタイムカード改ざん」
勇者もょもと(16歳)は、中学卒業後も派遣会社での派遣アルバイトを続けていた。






ふー、今日は忙しくて残業になってしまった。






おお、勇者もょもと!残業してしまうとはなにごとだ!チャッピー派遣先には、2倍の派遣料金を請求しておけ!もょもと、残業しては駄目だと契約書に書いてあるだろ!






雇用契約書に署名・捺印はさせたが、説明無し・本人控えも渡してないけど…






もょもと、契約違反の罰則として残業代はカットだ!チャッピー、タイムカードを訂正しておけ。






仕事をしてお金をもらうって大変だ…






労働者への残業代未払い、年少者の残業で2重の労働基準法違反。派遣先へは2倍の請求をする、タイムカード改ざんをして証拠隠滅。恐るべしブラック企業幹部!発覚したらすべて俺の責任になってそう!
「年少者の労働時間の制限」法60条 条文解説




1項 年少者の労働時間の制限
第三十二条の二から第三十二条の五まで、第三十六条、第四十条及び第四十一条の二の規定は、満十八才に満たない者については、これを適用しない。
出典:労働基準法 | e-Gov法令検索
(条文解説)
年少者は、労働基準法の下記の規定が適用されません。
- 変形労働時間制(原則)
- 32条の2 1カ月単位の変形労働時間制
- 32条の3 フレックスタイム制
- 32条の4 1年単位の変形労働時間制
- 32条の5 1週間単位の変形労働時間制
- 36条 36協定
時間外労働、休日労働、深夜業(22時~5時) - 40条 労働時間と休憩の特例
週法定労働時間44時間の特例、一斉休憩・自由利用制限の特例 - 41条の2
高度プロフェッショナル制度
変形労働時間制が適用される例外として、1カ月単位の変形労働時間制において、1カ月を平均して週40時間以内であれば、1日の労働時間に制限がなくなります。年少者を雇用する上で、一番注意すべきは36協定を締結しても、時間外労働及び休日労働をさせることができない点です。
2項 修学時間の通算
第五十六条第二項の規定によつて使用する児童についての第三十二条の規定の適用については、同条第一項中「一週間について四十時間」とあるのは「、修学時間を通算して一週間について四十時間」と、同条第二項中「一日について八時間」とあるのは「、修学時間を通算して一日について七時間」とする。
(条文解説)
第1項は、児童も含めた年少者についての適用除外の条文でしたが、第2項は児童のみの条文となります。児童は、休憩時間を除き、労働時間と修学時間を通算して、週40時間、1日7時間を超えて労働させてはなりません。
3項 年少者の労働時間の特例
使用者は、第三十二条の規定にかかわらず、満十五歳以上で満十八歳に満たない者については、満十八歳に達するまでの間(満十五歳に達した日以後の最初の三月三十一日までの間を除く。)、次に定めるところにより、労働させることができる。
(条文解説)
児童を除く年少者は、次の方法であれば 法60条1項の労働時間の制限の適用が除外されます 。
- 1週間のうちの1日の労働時間を4時間以内にした場合、週40時間の範囲内で、他の日の労働時間を10時間まで延長できる
- 週48時間、1日8時間を超えない範囲で、1カ月単位の変形労働時間制、1年単位の変形労働時間制を適用できる
フレックスタイム制と1週間単位の変形労働時間制は適用となりません。
「年少者の労働時間の制限」法60条 まとめ
- 年少者(18歳未満)は、36協定を締結していても残業、休日労働、深夜労働ができない
- 児童を除く年少者は、変形労働時間制は原則適用除外だが、例外規定があり1カ月単位・1年単位は一部適用できる
- 児童で法56条の許可を受けて労働する場合は、修学時間を通算して週40時間以内かつ1日7時間以内が上限時間






労働時間を誤魔化す、タイムカードの改ざんは、使用者・労働者どちらが行ったとしても労働基準法違反です。使用者の場合は、賃金未払いの違反となり、請求があった場合に2倍の残業代を支払わなければならない可能性があります。労働者が行う場合は、詐欺罪に問われます。
「年少者の労働時間の制限」法60条 社労士試験過去問の解説
条文の内容を社労士試験過去問で復習します。過去の判例や事例を学ぶことで実務でも役立ちます。
答えは「解答・解説を見る」 ▼を押して確認してください。
R1年出題 労働時間:1カ月単位の変形労働時間
1か月単位の変形労働時間制は、満18歳に満たない者及びその適用除外を請求した育児を行う者については適用しない。
出典:社労士過去問ランド
H23年出題 労働時間:限度
満15歳に達した日以後の最初の3月31日が終了するまでの者について、労働基準法第56条による所轄労働基準監督署長の許可を受けて使用する場合の労働時間は、修学時間を通算して、1週間について40時間以内、かつ、1日について7時間以内でなければならない。
H23年出題 フレックスタイム制
満18歳に満たない年少者については、労働基準法第32条の2のいわゆる1か月単位の変形労働時間制を適用することはできないが、同法第32条の3のいわゆるフレックスタイム制を適用することはできる。
H18年出題 変形労働時間制:例外
満18歳に満たない者については、いわゆる変形労働時間制は適用されないが、労働基準法第60条第3項の規定により、満15歳以上で満18歳に満たない者については、満18歳に達するまでの間(満15歳に達した日以後の最初の3月31日までの間を除く。)、1週間について48時間、1日10時間を超えない範囲内において、労働基準法第32条の2の規定の例により労働させることができる。
H30年出題 時間外労働
使用者は、労働基準法第56条第1項に定める最低年齢を満たした者であっても、満18歳に満たない者には、労働基準法第36条の協定によって時間外労働を行わせることはできないが、同法第33条の定めに従い、災害等による臨時の必要がある場合に時間外労働を行わせることは禁止されていない。