法5条「強制労働」人権擁護のため無理やり働かせることを禁止する

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法5条「強制労働」人権擁護のため無理やり働かせることを禁止する

この記事では、労働基準法5条「強制労働」について、わかりやすく解説します。

強制労働とは自分の意思によるものでなく、他人に強要されることによる労働のことです。最近ではあまり聞きませんが、借金のカタに「タコ部屋」に入れて、借金返済が終わるまで逃げられないなどです。

強制労働を禁止は人権擁護のため

労働基準法では労働者の人権擁護の観点から、強制労働を禁止しています。

人権とは、誰もが生まれながらにもっている自分らしく幸せに生きる権利のことです。日本国憲法で、国民主権・平和主義とならび、基本的人権の尊重を三大原則としています。強制労働という響きは前時代的な響きがありますが、最近でも事例があります。

水戸事件

20年ほど前に茨城県のとある会社が、知的障がい者に給与を払わず、暴力をふるって強制労働をさせていたという事件がありました。社会的弱者に対しての強制労働の事実は、表面化していないだけかもしれません。

労働基準法5条~7条については「労働者の人権擁護」を定めたものです。

強制労働とは無理やり働かされること

強制労働とは、条文で次のように記されています。一言でいえば、働きたくないのに無理やり働かされることです。

強制労働

使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によつて、労働者の意思に反して労働を強制してはならない。

出典:労働基準法 | e-Gov法令検索

使用者と労働者の間で労働関係があることが前提になりますが、事実上労働関係が存在すると認められる場合でも、この内容が適用されます。また実際に労働しなくても「労働を強要」すれば、法5条違反となり、例外はありません。

違反の場合、「1年以上10年以下の懲役、または20万円以上300万円以下の罰金」という、労働基準法の中で最も重い罰則となります。

ブラック企業では精神的に追い詰める

直接暴力を振るって働かせるということは、あまり聞きません。表面的には強制労働が無くなったように見えますが、ブラック企業などでは、精神的に追い詰めたり、同調圧力で辞められない状況をつくります。退職の意思を伝えても辞められないというのは、現代の強制労働かもしれません。

条文中の不当とは?違法、不正、不法の違い

条文中の「不当に拘束する」の不当の意味、混同しがちな違法、不正、不法の意味と使用例を確認します。

違法

違法とは、文字どおり、法に違反することをいいます。
使用例)違法駐車は、交通の妨げになる。道路交通法違反。

不当

不当とは、必ずしも法に違反することではありませんが、妥当性を欠いていることを指します。
使用例)警察が長時間にわたる、不当な取り調べをした。

不正

不正とは、正しくないことで、法令違反に限らず、職務に関する義務・違反などにも使います。
使用例)データねつ造など、研究結果で不正を行っている。

不法

不法とは、実質的に法に反していることという意味合いで用います。不法行為とは、故意(わざと)や過失(うっかり)によって誰かに損害を与えることです。
使用例)相手の不法行為により、損害を被った。

法5条「強制労働」人権擁護のため無理やり働かせることを禁止する まとめ

  • 労働基準法では、労働者の人権擁護の観点から強制労働を禁止している
  • 強制労働とは、働く意思がないものの他人から労働を強要されること

労働基準法5条「強制労働の禁止」社労士試験過去問と解説

条文だけでは、いまいち理解できないことが多いので、社労士試験の過去問で復習しましょう。
※答えは解答・解説を見る」▼を押して確認してください。

H26年出題 適用

労働基準法5条は、使用者が労働者に強制労働をさせることを禁止しているが、必ずしも形式的な労働契約により労働関係が成立していることを要求するものではなく、当該具体例において事実上労働関係が存在すると認められる場合であれば足りるとされている。

出典:社労士過去問ランド
H20年出題 手段

使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によって、労働者の意思に反して労働を強制してはならない。

出典:社労士過去問ランド
R2年出題 不当の意義

労働基準法第5条に定める「精神又は身体の自由を不当に拘束する手段」の「不当」とは、本条の目的に照らし、かつ、個々の場合において、具体的にその諸条件をも考慮し、社会通念上是認し難い程度の手段をいい、必ずしも「不法」なもののみに限られず、たとえ合法的であっても、「不当」なものとなることがある。

出典:社労士過去問ランド
H29年出題 罰則

労働基準法第5条に定める強制労働の禁止に違反した使用者は、「1年以上10年以下の懲役又は20万円以上300万円以下の罰金」に処せられるが、これは労働基準法で最も重い刑罰を規定している。

出典:社労士過去問ランド
この記事を書いた人
かんりにん

ブラック企業歴25年
「ブラック企業あるある」を反面教師に、法律を学べるかも!他の記事もヒマがあれば読んでください。

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