有給取得時の「時季指定権」、会社は変更できる「時季変更権」がある

この記事では、労働基準法39条「年次有給休暇の時季変更権」について、わかりやすく解説します。






今週金曜日、通院のため有給とります。






さっき、婚活パーティーのサイト見てただろっ…
行っても無駄だ!
労働者には「有給休暇をこの日に取りたい」といえる、時季指定権があります。使用者は原則、労働者が取りたいときに、有給休暇を与えなければいけません。
しかし、労働者が休むことにより業務に支障があるような場合は、取得日を変更できる、時季変更権があります。






今週金曜日、婚活パーティーのため有給とります。






今週金曜日、法事のため有給とります。






二人も休むと仕事まわんねーから、ずらしてもらえるかな?
(一緒に休むとか…空気読めよ!)
年次有給休暇については、こちらの記事でご確認ください。




労働者が希望した日に有給休暇を取得できる「時季指定権」




有給休暇の時期指定権については、法39条5項に次のような条文があります。
使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。
出典:労働基準法 | e-Gov法令検索
使用者は原則、労働者が希望した日(時季を指定)に有給休暇を与えなければいけません。でも労働者が休むことによって、会社の業務に支障が出ると困ってしまうため、次の但し書きがあります。
業務に支障がある場合、他の日に変更できる「時季変更権」




ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。
出典:労働基準法 | e-Gov法令検索
例えば、多数の労働者が同じ日に申請をして、代わりの人の補充ができなかったり、業務に支障が出る場合などは他の日に変更することができます。
派遣労働者については、派遣先ではなく、派遣元が判断します。
時季変更権が使える判断基準
条文中の、「事業の正常な運営を妨げるかどうか」は、次の項目で総合的に判断されます。
- どうしてもその労働者に働いてもらう必要があるため
- 代替要員を確保できないため
その他、企業の規模や作業内容、繁閑度合い、同じ日に有給休暇を請求する人数などで判断されます。
しかし実情は、有給休暇が取れるかどうかは、職場の空気や、上司次第というところが多いのではないでしょうか。会社によっては、有給取得理由次第で拒否するようなところもあります。
ブラック企業の事例「上司の壁」






来月、法事のため有給を取りたいのですが…






来月は会社の創立3周年3カ月のイベントがあるから駄目だ!時期が悪い。






え…それではその次の月にずらして取ります






再来月は、営業強化月間だから有給は認めん!
(法事って、ずらせるのか??)






それじゃ当日に体調不良で連絡っと…
有給休暇の取得理由は必要か?




有給休暇は、一定期間継続勤務した労働者に与えられる当然発生する権利です。有給の取得理由の確認や、詳細に報告させることは、労働者が申請しづらくなる理由のひとつになりますし、望ましいとはいえません。
有給休暇の申請用紙に、理由を記入しなければならないのは違法ではありませんが、記入が無いことで有給を認めない、理由により認めるかどうかの判断をするなどは、「年休自由利用の原則」に反し、違法であるといえます。
年休自由利用の原則
過去に有給休暇の利用目的をめぐる最高裁の判例で、休暇の利用について使用者の干渉を許さない「年休自由利用の原則」が認められました。仮にうその理由が申告された場合でも、労働基準法上は処罰の対象とはなりません。
有給取得時の「時季指定権」、会社は変更できる「時季変更権」がある まとめ
- 労働者は、希望した日に有給休暇を取得できる「時季指定権」がある
- 使用者は、業務に支障がある場合、他の日に変更できる「時季変更権」がある
- 労働者には、休暇の利用について使用者の干渉を許さない「年休自由利用の原則」がある
労働基準法39条「年次有給休暇の時季変更権」社労士試験過去問と解説




条文だけでは、いまいち理解できないことが多いので、社労士試験の過去問で復習しましょう。
※答えは「解答・解説を見る」▼を押して確認してください。
労働者の時季指定による年次有給休暇は、労働者が法律上認められた休暇日数の範囲内で具体的な休暇の始期と終期を特定して時季指定をし、使用者がこれを承認して初めて成立するとするのが最高裁判所の判例である。
出典:社労士過去問ランド
最高裁判所の判例は、「年次休暇の利用目的は労基法の関知しないところであり、休暇をどのように利用するかは、使用者の干渉を許さない労働者の自由である、とするのが法の趣旨である」と述べている。
出典:社労士過去問ランド
年次有給休暇を労働者がどのように利用するかは労働者の自由であるが、使用者の時季変更権を無視し、労働者がその所属の事業場においてその業務の正常な運営の阻害を目的として一斉に休暇届を提出して職場を放棄する場合は、年次有給休暇に名をかりた同盟罷業にほかならないから、それは年次有給休暇権の行使ではない。
出典:社労士過去問ランド
労働者が長期かつ連続の年次有給休暇を取得しようとする場合には、使用者との事前の調整を経なければ、時季指定権を行使することができない。
出典:社労士過去問ランド
派遣中の派遣労働者については、派遣先が極端な繁忙状態になっており、当該派遣労働者が年次有給休暇を取得すれば派遣先の事業の正常な運営を妨げるような場合であっても、年次有給休暇の時季変更権の行使に係る事業の正常な運営を妨げるかどうかの判断は、派遣元の事業についてなされる。
出典:社労士過去問ランド
6月30日をもって解雇により退職することの決まっている労働者が、労働基準法上20日分の年次有給休暇権を有している場合において、所定の手続に従って、6月15日から同月30日までの年次有給休暇を請求したときには、使用者は、いかに業務が繁忙であっても、当該労働者の解雇予定日を超えての時季変更は行えない。
出典:社労士過去問ランド






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日々試行錯誤しながら、学習しております。