「専門業務型裁量労働制」実働労時間に関わらず残業代は発生しない

  • URLをコピーしました!
目次

「専門業務型裁量労働制」実働労時間に関わらず残業代は発生しない

新商品の研究開発やシステム設計・編集など専門業務では、業務の性質上仕事の進行や時間配分を、担当労働者の裁量に委ねなければならないことがあります。この場合に、実労働時間に関わらず、みなし労働時間が認められる制度が、専門業務型裁量労働制です。

みなし労働時間制については、こちらの記事でご確認ください。

そのため、専門業務型裁量労働制を導入した場合、労働者が何時間も残業したとしても要件を満たすかぎり、残業代が発生しないことになります。

法38条の3は、「専門業務型」の対象となる19の業務や要件を定めています。

かんりにん

管理人は、ブラック企業歴25年・社労士試験を受けようと思ってのは10年前…。勉強がまったく捗らないときに考えたのが、
ブラック企業あるあると、法律を関連付けて記憶する!」勉強法です。
日々試行錯誤しながら、学習しております。

労働基準法38条の3「専門業務型裁量労働制」条文

専門業務型裁量労働制

使用者が、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、次に掲げる事項を定めた場合において、労働者を第一号に掲げる業務に就かせたときは、当該労働者は、厚生労働省令で定めるところにより、第二号に掲げる時間労働したものとみなす

出典:労働基準法 | e-Gov法令検索

(条文解説)
労働者の過半数代表者と、以下の事項について労使協定を締結したときは、専門業務型裁量労働制を採用することができます。導入要件と手順を確認します。

導入要件(各号)

一 業務の性質上その遂行の方法を大幅に当該業務に従事する労働者の裁量にゆだねる必要があるため、当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をすることが困難なものとして厚生労働省令で定める業務のうち、労働者に就かせることとする業務(以下この条において「対象業務」という。)
二 対象業務に従事する労働者の労働時間として算定される時間
三 対象業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し、当該対象業務に従事する労働者に対し使用者が具体的な指示をしないこと
四 対象業務に従事する労働者の労働時間の状況に応じた当該労働者の健康及び福祉を確保するための措置を当該協定で定めるところにより使用者が講ずること。
五 対象業務に従事する労働者からの苦情の処理に関する措置を当該協定で定めるところにより使用者が講ずること。
六 前各号に掲げるもののほか、厚生労働省令で定める事項

専門業務型裁量労働制の導入手順

STEP
労使協定を結ぶ

専門業務型裁量労働制を採用する場合は、労使協定を締結して、労働基準監督署に届け出る必要があります。

STEP
対象となる業務を決める(1号)

1号の裁量労働制の対象となる業務は、業務の遂行や手段・時間配分の決定指示が困難な、以下の19の専門業務が認められています。

  1. 新製品、新技術の研究開発
  2. 情報処理システムの分析・設計
  3. 新聞・出版の取材、編集
  4. デザイナー
  5. プロデューサー、ディレクター
  6. コピーライター
  7. システムコンサルタント
  8. インテリアコーディネーター
  9. ゲーム用ソフトウェアの創作
  10. 証券アナリスト
  1. 金融商品の開発
  2. 大学の教授研究
  3. 公認会計士
  4. 弁護士
  5. 建築士
  6. 不動産鑑定士
  7. 弁理士
  8. 税理士
  9. 中小企業診断士
STEP
みなし労働時間を決める(2号)

対象の労働者の1日当たりの労働時間数を定め、法定労働時間を超える場合は、割増賃金の支払いが必要となります。

STEP
その他労使協定に定める(3号~6号)

上司や使用者は、業務を行う労働者に対して、業務の進め方や時間配分に対して、具体的な指示をしないことが条件です。

専門業務型裁量労働制は、ともするとオーバーワークになりがちです。したがって、出退勤の時刻を記録し、労働者の勤務状況、健康状態に応じて休暇を与えるなどして、労働者の心身の健康を確保することも必要になります。

専門業務型裁量労働制が適用されない場合

次の場合は専門業務型裁量労働制が認められません。

  • プロジェクトチームの開発業務で、リーダーの指示を受けて分担作業を行う者
  • プロジェクト内で、業務に付随する雑用(掃除など)や補助のみを行う者

労働基準法38条の3「専門業務型裁量労働制」まとめ

  • 裁量労働制は、実際の労働時間にかかわらず、労使協定で定めた時間を労働したとみなす制度
  • みなし時間が8時間であれば、実労働時間が何時間であろうと、残業代がいらない
  • 導入するには、労使協定を締結し、届け出る必要がある

労働基準法38条の3「専門業務型裁量労働制」社労士試験過去問と解説

条文だけでは、いまいち理解できないことが多いので、社労士試験の過去問で復習しましょう。
※答えは解答・解説を見る」▼を押して確認してください。

H19年出題 割増賃金

労働基準法第38条の3に規定するいわゆる専門業務型裁量労働制を採用しようとする場合において、労働時間の算定については労使協定で定めるところによることとした場合に、当該協定に定めるべき時間は、1日当たりの労働時間であり、休憩、深夜業及び休日に関する規定の適用は排除されないので、法定休日に労働させた場合には、当該休日労働に係る割増賃金を支払う必要がある。

出典:社労士過去問ランド

H16年出題 健康及び福祉の確保

労働基準法第38条の3に規定するいわゆる専門業務型裁量労働制を労使協定により採用しようとする場合においては、当該協定により、対象業務に従事する労働者の労働時間の状況に応じた当該労働者の健康及び福祉を確保するための措置を当該協定で定めるところにより使用者が講ずることを定めなければならない。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次