法38条「事業場外のみなし労働時間制」外回りの営業職などで導入

この記事では、労働基準法38条の2「事業場外みなし労働時間制」について、わかりやすく解説します。
みなし労働時間制とは
みなし労働時間制とは、あらかじめみなし時間を規定し、実際の労働時間にかかわらず、規定時間を働いたとみなす制度です。みなし時間は、その業務を遂行するのに通常必要とされる時間を労使協定で定めます。
みなし労働時間が8時間という労使協定が結ばれていれば、
12時間働いたとしても、残業代が発生しない。給料はみなされた労働時間分しか払わなくてよい。逆に6時間など、みなし時間未満であっても、給料は変わりません。
事業場外みなし労働時間制は、みなし労働時間制の一つで、他にも裁量労働制があります。裁量労働制には更に2種類に分かれます。
みなし労働時間制の種類
- 事業場外みなし労働時間制
-
社外で仕事をする場合に、所定の時間労働したとみなす制度です。
- 裁量労働制
-
裁量労働制とは、実際に働いた時間に関係なく「契約した労働時間分を働いた」ことにする制度です。基本的には時間外労働という概念がないため、労働者保護の観点から労働時間に関する取り決めがあったり、適用される職種が限られたりします。
以下の2種類があります。
- 専門業務型裁量労働制
デザイナーやシステムエンジニアなど特定の19の業務について、業務遂行の手段や時間配分などに関して使用者が具体的な指示をしない場合、労使協定で定めた労働時間を働いたとみなす制度です。 - 企画業務型裁量労働制
事業運営の企画、立案、調査及び分析などに携わる業務に適用されます。
- 専門業務型裁量労働制
これらのみなし労働時間制について、
休憩・休日規定
休日労働・深夜の割増賃金
すべて適用されます。条文を確認します。






管理人は、ブラック企業歴25年・社労士試験を受けようと思ってのは10年前…。勉強がまったく捗らないときに考えたのが、
「ブラック企業あるあると、法律を関連付けて記憶する!」勉強法です。
日々試行錯誤しながら、学習しております。
労働基準法38条の2「事業場外のみなし労働時間制」条文




1項 事業場外労働
労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働したものとみなす。ただし、当該業務を遂行するためには通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合においては、当該業務に関しては、厚生労働省令で定めるところにより、当該業務の遂行に通常必要とされる時間労働したものとみなす。
出典:労働基準法 | e-Gov法令検索
(条文解説)
労働者が社外で勤務をして、労働時間を把握できないときは、原則として、所定労働時間勤務したものとみなします。ただし、所定労働時間を超えて労働することが必要な場合、業務の遂行に通常必要とされる時間勤務したものとみなします。
所定労働時間が8時間とされていても、仕事が10時間かかるものであるなら、10時間をみなし労働時間としなければなりません。突発的なものを除いて、できるだけ労使協定で、定めなければならないとされています(必ずではない)




2項 事業場外労働(労使協定)
前項ただし書の場合において、当該業務に関し、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定があるときは、その協定で定める時間を同項ただし書の当該業務の遂行に通常必要とされる時間とする。
(条文解説)
1項の事業場外労働に関して、労働者の過半数代表者と労使協定を締結したときは、その労使協定で定めた時間を通常必要とされる時間とします。
事業場外のみなし労働時間制が適用されない場合
社外で仕事をしていても、次の場合は事業場外のみなし労働時間制が認められません。
- 現場に管理者が同行し、指示の下で働いている
- 携帯電話で随時使用者からの指示を受けながら働いている
- 事前に決められたスケジュールに沿って動いている
- 取引先の職場などで、「何時から何時まで働く」と労働時間が正確にわかる




3項 事業場外労働(労使協定の届出)
使用者は、厚生労働省令で定めるところにより、前項の協定を行政官庁に届け出なければならない。
(条文解説)
みなし労働時間が法定労働時間を超える場合は、労使協定を締結し、労働基準監督署へ届け出る必要があります。法定労働時間を超えた分は、割増賃金を支払います。
定める内容は、次の2つです。
- 当該業務の遂行に通常必要とされる1日当たりの労働時間数(事業場外分のみ)
- 労使協定の有効期間
労働基準法38条の2「事業場外のみなし労働時間制」まとめ
- 事業場外のみなし労働時間制とは、社外で労働時間を算定が困難な時、所定労働時間を働いたものとみなす制度
- 労使協定を締結したときは、協定で定めた時間を通常必要とされる時間とみなす
- 社外で仕事をする場合でも、労働時間を把握できるのであれば、みなし労働時間とは認められない
事業場外みなし労働時間制は、今から30年以上前の1988年に制定されたものです。現在では外回りに出ていても、携帯電話で指示を受けたり使用者の指揮監督が及び、労働時間の算定が可能になります。今ではすっかり時代遅れの制度であるといえます。
労働基準法38条の2「事業場外のみなし労働時間制」社労士試験過去問と解説




条文だけでは、いまいち理解できないことが多いので、社労士試験の過去問で復習しましょう。
※答えは「解答・解説を見る」▼を押して確認してください。
H18年出題 みなし労働時間
労働基準法第38条の2の規定によれば、労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは、原則として所定労働時間労働したものとみなされるが、当該業務を遂行するためには通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合においては、当該業務に関しては、当該業務の遂行に通常必要とされる時間労働したものとみなされる。この場合において、当該業務に関し、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定があるときは、その協定で定める時間が、当該業務の遂行に通常必要とされる時間とされる。
H22年出題 在宅勤務
労働基準法第38条の2に定めるいわゆる事業場外労働のみなし制は、情報通信機器を用いて行う在宅勤務の場合、どのような要件の下でも、結局は当該通信機器を通じて使用者の管理を受けることとなるため、適用されない。
R1年出題 労使協定の届出
労働基準法第38条の2に定めるいわゆる事業場外労働のみなし労働時間制に関する労使協定で定める時間が法定労働時間以下である場合には、当該労使協定を所轄労働基準監督署長に届け出る必要はない。