「代替休暇制度」50%以上の割増賃金を支払う代わりに有給休暇

2010年に法定割増賃金率の引き上げ等をはじめとする労働基準法の改正が行われました。この改正によって新設されたのが、「代替休暇制度」です。
代替(だいたい)休暇制度は、月60時間を超える部分の時間外労働について、50%以上の割増賃金の支払いの代わりに、有給休暇を与える制度です。要するに、50%増の割増賃金を支払うか、それとも代替休暇を与えるかを、選択できることになったわけです。
代替休暇制度導入のメリット
代替休暇制度を導入した場合、会社(使用者)と従業員(労働者)それぞれの立場でのメリットを考えてみます。
- 使用者のメリット
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割増賃金の支払いが少なくなり、残業代の抑制になる。
- 労働者のメリット
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割増賃金が少なくなり、お金は減るが休暇を得ることにより、健康増進に繋がる。




代替休暇制度を利用することにより、労働者に支払う残業代を抑えられる可能性がありますが、次の手順を守る必要があります。
労働者の過半数代表者と労使協定を締結する。代替休暇制度は、あくまでも通常の割増賃金との差額の支払いを免除する制度なので、25%の割増賃金の支払いは必要です。
労使協定には以下の内容を取り決めます。
- 代替休暇の時間数の算定方法
- 代替休暇の単位
1日または半日 - 代替休暇を与えることができる期間
当該時間外労働が発生した1カ月の末日から2カ月以内としなければならない
例)7月の時間外労働による代替休暇は、9月末までに取得 - 代替休暇の取得日の決定方法
具体的には、代替休暇を取得する意思があるかどうかの意向確認を行う手続きを意味します - 割増賃金の支払日
使用者が強制的に取得させるのは不可です。代替休暇制度が設けられている場合でも、50%以上の割増賃金を受けるか、代替休暇を取得するかは労働者の任意になります。
代替休暇の時間数は、以下の計算式により算出されます。




計算式では分かりにくいので、以下計算例を挙げます。
条件:月60時間超の割増率は50%、ある月の時間外労働が95時間であった場合
- 月60時間超の時間外労働を計算
95h-60h=35h - 代替休暇の時間数を計算
35h×0.25=8.75h
代替休暇を与える単位は、1日または半日とされていますので、STEP3で計算した時間数を日単位に換算して休暇を与えます。計算例の場合、代替休暇を取得した後の端数は、50%の割増賃金の支払いが必要です。
- 端数を計算
8.75h-8h=0.75h - 月60時間超の労働時間に再度換算
0.75h÷0.25=3h - 3時間分は、50%の割増賃金にて労働者に支払う
以上を法律条文で確認します。
労働基準法37条3項「代替休暇」条文




3項 代替休暇
(条文前半)
使用者が、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、第一項ただし書の規定により割増賃金を支払うべき労働者に対して、当該割増賃金の支払に代えて、通常の労働時間の賃金が支払われる休暇(第三十九条の規定による有給休暇を除く。)を厚生労働省令で定めるところにより与えることを定めた場合において、
(条文解説・前半)
1カ月の時間外労働の時間が60時間を超えた場合、5割増で割増賃金を労働者に支払わなければいけませんが、この支払いに代えて代替休暇を与えることについて、労使協定を締結して、
(条文後半)
当該労働者が当該休暇を取得したときは、当該労働者の同項ただし書に規定する時間を超えた時間の労働のうち当該取得した休暇に対応するものとして厚生労働省令で定める時間の労働については、同項ただし書の規定による割増賃金を支払うことを要しない。
(条文解説・後半)
労働者が代替休暇を取得したときは、5割増の割増賃金の支払いが免除されます。
法37条、1項・2項については、こちらの記事で確認して下さい。



