法37条「残業手当」労働基準法上の時間外労働と残業の違いとは?

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法37条「残業手当」労働基準法上の時間外労働と残業の違いとは?

この記事では、労働基準法37条「残業手当」について、わかりやすく解説します。

予め決められた時間を超えて働く時間を指す、「残業」と「時間外労働」。普段使い分けて使用することが少ないですが、労働基準法上では、それぞれ次のように定義されています。

残業

労働基準法上の残業とは、会社の就業規則や労働契約書などによって決められた労働時間、または労働基準法で定められた労働時間を超えた時間をいいます。

時間外労働

時間外労働とは残業に加えて、就業時間帯の前に出勤する早出、休日に出勤する休日労働時間も含まれます。時間外労働は就業時間帯以外に働く時間全般のことを指す一方で、残業は就業時間帯後に働くことなので、残業は時間外労働の一種になります。

残業した時間に対して支払われる「残業手当」の具体的計算方法については、こちらの記事を確認してください。

働き方改革関連法での割増賃金率改定

法37条は、時間外労働をさせた場合の割増賃金についての条文です。1カ月間で60時間を超えた場合、60時間を超えた分については、法定割増賃金率が50%以上となっています。ただし、2023年4月までは、猶予期間として中小企業は、従来どおりの25%以上でよいとされています。

中小企業とは
卸売業は資本金1億円以下または従業員100人以下、サービス業は資本金5,000万円以下または従業員100人以下、小売業は資本金5,000万円以下または従業員50人以下、製造業などその他の業種は、資本金3億円以下または従業員300人以下の企業のこと。

2023年4月から中小企業も月60時間超の時間外労働で、1.5倍の割増賃金の支払いが必要になります。しかし、サービス残業が横行している状況では、形骸化した制度が増えるだけです。大企業など、ホワイト企業との格差は大きくなるばかり…。

かんりにん

管理人は、ブラック企業歴25年・社労士試験を受けようと思ってのは10年前…。勉強がまったく捗らないときに考えたのが、
ブラック企業あるあると、法律を関連付けて記憶する!」勉強法です。
日々試行錯誤しながら、学習しております。

労働基準法37条「残業手当」条文

1項 残業手当

(条文前半)
使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。

出典:労働基準法 | e-Gov法令検索

(条文解説・前半)
労働者に時間外労働又は休日労働をさせたときは、以下の割増賃金を支払わないといけません。

  • 1週40時間又は1日8時間を超えた時間に対して、1.25倍
  • 週1回の休日に勤務した時間に対して、1.35倍

(条文後半)
ただし、当該延長して労働させた時間が一箇月について六十時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の五割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。

(条文解説・後半)
1カ月の時間外労働の時間が60時間を超えた部分については、5割増の割増賃金を支払わないといけません。

2項 割増賃金令

前項の政令は、労働者の福祉、時間外又は休日の労働の動向その他の事情を考慮して定めるものとする。

(条文解説)
時間外勤務手当と休日勤務手当の割増率は、社会情勢などを考慮し変動、政令によって決定されます。

労働基準法37条「残業手当」まとめ

  • 時間外労働は、就業時間帯以外に働く時間全般、残業は就業時間帯後なので、時間外労働の一種となる
  • 週40時間、1日8時間を超えた時間に対して1.25倍、週1回の休日に勤務した時間に対して1.35倍割増賃金を支払必要
  • 1カ月の時間外労働の時間が60時間を超えた部分は1.5倍の割増賃金が必要だが、代替休暇を与えることで代替できる

労働基準法37条「残業手当」社労士試験過去問と解説

条文だけでは、いまいち理解できないことが多いので、社労士試験の過去問で復習しましょう。
※答えは解答・解説を見る」▼を押して確認してください。

H29年出題 割増率

休日労働が、8時間を超え、深夜業に該当しない場合の割増賃金は、休日労働と時間外労働の割増率を合算しなければならない。

出典:社労士過去問ランド

H16年出題 休日労働

始業時刻が午前8時、終業時刻が午後5時、休憩時間が正午から午後1時までの事業場において、徹夜残業を行い、翌日の法定休日の正午において当該残業が終了した場合、当該法定休日の午前8時までは前日の労働時間の延長として、その後は法定休日の労働として、割増賃金の計算を行わなければならない。

H28年出題 端数処理:労働時間

1か月における時間外労働の時間数の合計に1時間未満の端数がある場合に、30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げる事務処理方法は、労働基準法第24条及び第37条違反としては取り扱わないこととされている。

H28年出題 賃金の計算額:月給

労働基準法第37条に定める時間外、休日及び深夜の割増賃金を計算するについて、労働基準法施行規則第19条に定める割増賃金の基礎となる賃金の定めに従えば、通常の労働時間1時間当たりの賃金額を求める計算式のうち、正しいものはどれか。

なお、当該労働者の労働条件は次のとおりとする。
賃金:基本給のみ 月額300,000円
年間所定労働日数:240日
計算の対象となる月の所定労働日数:21日
計算の対象となる月の暦日数:30日
所定労働時間:午前9時から午後5時まで、休憩時間:正午から1時間

A 300,000円 ÷(21 × 7)
B 300,000円 ÷(21 × 8)
C 300,000円 ÷(30 ÷ 7 × 40)
D 300,000円 ÷(240 × 7 ÷ 12)

H16年出題 派遣労働者

労働者派遣契約上、法定時間外労働及び法定休日労働がないものとされ、したがって、労働基準法第36条の規定に基づく時間外・休日労働に関する協定の締結など法所定の手続がとられていない場合であっても、派遣先の使用者が、当該労働者派遣契約に違反して法定休日において派遣中の労働者に休日労働を行わせたときは、派遣先の使用者ではなく派遣元の使用者が当該休日労働に係る割増賃金を支払わなければならない。

R2年出題 違法な時間外労働等:判例

労働基準法第37条は、「使用者が、第33条又は前条第1項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合」における割増賃金の支払について定めているが、労働基準法第33条又は第36条所定の条件を充足していない違法な時間外労働ないしは休日労働に対しても、使用者は同法第37条第1項により割増賃金の支払義務があり、その義務を履行しないときは同法第119条第1号の罰則の適用を免れないとするのが、最高裁判所の判例である。

H23年出題 算定の基礎:家族手当

労働基準法第37条に定める割増賃金の基礎となる賃金(算定基礎賃金)はいわゆる通常の賃金であり、家族手当は算定基礎賃金に含めないことが原則であるから、家族数に関係なく一律に支給されている手当は、算定基礎賃金に含める必要はない。

H26年出題 算定の基礎:通勤手当

通勤手当は、労働とは直接関係のない個人的事情に基づいて支払われる賃金であるから、労働基準法第37条の割増賃金の基礎となる賃金には算入しないこととされている。

H30年出題 割増賃金事例

労働基準法第35条に定めるいわゆる法定休日を日曜とし、月曜から土曜までを労働日として、休日及び労働時間が次のように定められている製造業の事業場における、労働に関する時間外及び休日の割増賃金に関する記述に関して。
労働日における労働時間は全て始業時刻:午前10時、終業時刻:午後5時、休憩:午後1時から1時間

休み6時間6時間6時間6時間6時間6時間

問① 1日の労働

月曜の時間外労働が火曜の午前3時まで及んだ場合、火曜の午前3時までの労働は、月曜の勤務における1日の労働として取り扱われる。

問② 法定労働時間

日曜から水曜までは所定どおりの勤務であったが、木曜から土曜までの3日間の勤務が延長されてそれぞれ10時間ずつ労働したために当該1週間の労働時間が48時間になった場合、土曜における10時間労働の内8時間が割増賃金支払い義務の対象労働になる。

問③ 休日を含む2暦日 休日労働

日曜の午後8時から月曜の午前3時まで勤務した場合、その間の労働は全てが休日割増賃金対象の労働になる。

問④ 休日を含む2暦日 時間外労働

土曜の時間外労働が日曜の午前3時まで及んだ場合、日曜の午前3時までの労働に対する割増賃金は、土曜の勤務における時間外労働時間として計算される。

R1年出題 判例:定額残業代の支払

「いわゆる定額残業代の支払を法定の時間外手当の全部又は一部の支払とみなすことができるのは、定額残業代を上回る金額の時間外手当が法律上発生した場合にその事実を労働者が認識して直ちに支払を請求することができる仕組み(発生していない場合にはそのことを労働者が認識することができる仕組み)が備わっており、これらの仕組みが雇用主により誠実に実行されているほか、基本給と定額残業代の金額のバランスが適切であり、その他法定の時間外手当の不払や長時間労働による健康状態の悪化など労働者の福祉を損なう出来事の温床となる要因がない場合に限られる。」とするのが、最高裁判所の判例である。

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