「特別条項付き36協定」無制限の残業から罰則付き上限規制が適用

この記事では、労働基準法36条「特別条項付き36協定」について、わかりやすく解説します。
使用者は労働者に、法定労働時間を超える時間外労働や、休日労働などを労使協定を結ぶことで、命じることができます。詳しくはこちらの記事を確認して下さい。




この労使協定が36協定といいますが、上限時間数が設けられています。
期間 | 時間外労働 | 変形労働時間制が適用 される場合の上限 |
---|---|---|
1カ月 | 45時間 | 42時間 |
1年 | 360時間 | 320時間 |
しかし、繁忙期や緊急対応などで、上限時間数を守れない場合もあります。それを乗り切るためにの制度が、特別条項の制度です。法36条5項は、特別な事情がある場合に限り、36協定で定めた上限を超える残業を例外的に認めるものです。正しくは、特別条項付き36協定といいます。






管理人は、ブラック企業歴25年・社労士試験を受けようと思ってのは10年前…。勉強がまったく捗らないときに考えたのが、
「ブラック企業あるあると、法律を関連付けて記憶する!」勉強法です。
日々試行錯誤しながら、学習しております。
労働基準法36条「特別条項付き36協定」条文




5項 特別条項
(条文前半)
出典:労働基準法 | e-Gov法令検索
第一項の協定においては、第二項各号に掲げるもののほか、当該事業場における通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に第三項の限度時間を超えて労働させる必要がある場合において、一箇月について労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させることができる時間(第二項第四号に関して協定した時間を含め百時間未満の範囲内に限る。)並びに一年について労働時間を延長して労働させることができる時間(同号に関して協定した時間を含め七百二十時間を超えない範囲内に限る。)を定めることができる。
(条文解説・前半)
36協定には、通常では予想できない業務量の大幅な増加等に伴って、臨時的に限度時間を超えて勤務させる必要がある場合に、1カ月については時間外労働と休日労働の時間を合計して100時間未満、1年については時間外労働のみでの720時間以内を上限として、
(条文後半)
この場合において、第一項の協定に、併せて第二項第二号の対象期間において労働時間を延長して労働させる時間が一箇月について四十五時間(第三十二条の四第一項第二号の対象期間として三箇月を超える期間を定めて同条の規定により労働させる場合にあつては、一箇月について四十二時間)を超えることができる月数(一年について六箇月以内に限る。)を定めなければならない。
(条文解説・後半)
1カ月の時間外労働と休日労働を合計した時間、1年の時間外労働の時間を定めることができます。ただし、時間外労働が1カ月に45時間(限度時間)を超える月数は、1年につき6カ月以内でないといけません。




特別条項付き36協定の注意点
- 上限拡大は年6回まで
-
特別条項は、あくまでも繁忙期や緊急時を乗り切るための特別な例外対応なので、上限を拡大できるのは、年6回までです。
- 延長できる労働時間に上限がある
-
働き方改革関連法の順次施行に伴い、大企業は2019年4月1日から、中小企業は2020年4月1日から、時間外労働の罰則付き上限規制が適用されました。
法改正前のルールでは、法的強制力はありませんでしたが、法改正後は、単月上限100時間、複数月平均が常に80時間以内、年間上限720時間が法的基準になりました。
6項 限度時間を超えて労働させられる範囲
使用者は、第一項の協定で定めるところによつて労働時間を延長して労働させ、又は休日において労働させる場合であつても、次の各号に掲げる時間について、当該各号に定める要件を満たすものとしなければならない。
(条文解説)
36協定を締結して、時間外労働や休日労働をさせる場合でも、次の要件を満たす必要があります。
- 坑内労働については、1日の時間外労働の時間が、2時間を超えないこと
- 1カ月の時間外労働と休日労働の合計時間が、100時間未満であること
- 時間外労働と休日労働の合計時間が、平均して1カ月80時間を超えないこと




7項 36協定の記載事項に関する指針
厚生労働大臣は、労働時間の延長及び休日の労働を適正なものとするため、第一項の協定で定める労働時間の延長及び休日の労働について留意すべき事項、当該労働時間の延長に係る割増賃金の率その他の必要な事項について、労働者の健康、福祉、時間外労働の動向その他の事情を考慮して指針を定めることができる。
(条文解説)
厚生労働大臣は、36協定で定める事項について、労働者の健康、福祉、時間外労働の動向その他の事情を考慮して指針を定めることができます。※厚生労働大臣はあまり条文に出てこないので、注意が必要です。
8項 36協定の限度時間の遵守
第一項の協定をする使用者及び労働組合又は労働者の過半数を代表する者は、当該協定で労働時間の延長及び休日の労働を定めるに当たり、当該協定の内容が前項の指針に適合したものとなるようにしなければならない。
(条文解説)
36協定を締結する使用者と労働者の過半数代表者は、法定労働時間を超えて勤務させる時間について、限度基準を超えないようにしないといけません。協定に定めた限度時間を超えて働かせると、労働基準法違反になります。




9項 36協定の限度時間の助言指導
行政官庁は、第七項の指針に関し、第一項の協定をする使用者及び労働組合又は労働者の過半数を代表する者に対し、必要な助言及び指導を行うことができる。
(条文解説)
労働基準監督署は36協定に関する指針に基づいて、使用者や労働者の過半数代表者に助言や指導を行うことができます。
10項 助言・指導時の健康への配慮
前項の助言及び指導を行うに当たつては、労働者の健康が確保されるよう特に配慮しなければならない。
(条文解説)
労働基準監督署が使用者や労働者の過半数代表者に助言や指導を行う際は、労働者の健康が確保されるよう配慮します。




11項 新技術の研究開発業務
第三項から第五項まで及び第六項(第二号及び第三号に係る部分に限る。)の規定は、新たな技術、商品又は役務の研究開発に係る業務については適用しない。
(条文解説)
新技術、新商品、新役務の研究開発に関する業務については、次の規定が適用されません。
- 第3項 36協定の時間外労働の時間
- 第4項 36協定の限度時間
- 第5項 限度時間を超える36協定
- 第6項 限度時間を超えて労働させられる範囲
新技術、新商品、新サービスの研究開発業務に従事する労働者については、限度時間や上限時間の規定が適用されません。ただし、時間外労働などに対する割増賃金は発生します。
労働基準法36条「特別条項付き36協定」まとめ
- 特別条項とは、繁忙期や緊急対応など、36協定で定めた上限を超える残業を例外的に認めるもの
- 延長できる労働時間の上限は、月100時間、複数月平均80時間以内、年間720時間
- 働き方改革関連法の施行に伴い、時間外労働の罰則付き上限規制が適用された
労働基準法36条「特別条項付き36協定」社労士試験過去問と解説




条文だけでは、いまいち理解できないことが多いので、社労士試験の過去問で復習しましょう。
※答えは「解答・解説を見る」▼を押して確認してください。
H29年出題 有害な業務の労働時間の延長:休日
【労働基準法第36条に定める時間外及び休日の労働に関して】
出典:社労士過去問ランド
坑内労働等の労働時間の延長は、1日について2時間を超えてはならないと規定されているが、休日においては、10時間を超えて休日労働をさせることを禁止する法意であると解されている。
H29年出題 有害な業務の労働時間の延長:その他
【労働基準法第36条(以下本問において「本条」という。)に定める時間外及び休日の労働に関して】
坑内労働その他厚生労働省令で定める健康上特に有害な業務(以下本問において「坑内労働等」という。)の労働時間の延長は、1日について2時間を超えてはならないと規定されているが、坑内労働等とその他の労働が同一の日に行われる場合、例えば、坑内労働等に8時間従事した後にその他の労働に2時間を超えて従事させることは、本条による協定の限度内であっても本条に抵触する。