30人未満のホテル・旅館、飲食店で活用「1週間単位変形労働時間制」

この記事では、労働基準法32条「1週間単位変形労働時間制」について、わかりやすく解説します。
変形労働時間制は、時期によって忙しさにバラつきがある場合に、労働時間を調整できる制度です。変形労働時間制の種類は、1週間・1カ月・1年単位とありますが、「1週間単位変形労働時間制」だけは、対象となる業種や規模が限定されています。
1週間単位変形労働時間制は例外措置
労働基準法の正式名称を「1週間単位の非定型的変形労働時間制」といい、その特徴は、毎日の労働時間を1週間単位で柔軟に決められるようにしたものです。週40時間の上限は変わりませんが、1日最大10時間まで勤務させることができます。
採用できるのは、労働者30人未満の小売業、旅館、料理・飲食店のサービス業の事業です。週末だけ忙しく小規模な会社では、繁閑の差に対応する人員確保が大変であるため、このような例外措置があります。
1週間単位の変形労働時間制を導入できる条件である、「労働者30人未満」は、正社員だけでなく、非正規雇用であるパート・アルバイトも含まれます。条文で内容確認していきます。






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労働基準法32条の5「1週間単位の非定型的変形労働時間制」条文




1項 1週間単位の非定型的変形労働時間制
(条文前半)
出典:労働基準法 | e-Gov法令検索
使用者は、日ごとの業務に著しい繁閑の差が生ずることが多く、かつ、これを予測した上で就業規則その他これに準ずるものにより各日の労働時間を特定することが困難であると認められる厚生労働省令で定める事業であつて、常時使用する労働者の数が厚生労働省令で定める数未満のものに従事する労働者については、
(条文解説・前半)
忙しい日と暇な日の忙しさの差があり、事前に就業規則などでそれぞれの日の労働時間の特定が難しい、小売業・旅館・料理・飲食店の業種で、労働者が30人未満の場合に、
(条文後半)
当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定があるときは、第三十二条第二項の規定にかかわらず、一日について十時間まで労働させることができる。
(条文解説・後半)
労働者の過半数代表者と労使協定・届出を行えば、1日10時間まで労働させることができます。ただし、週40時間が上限となります。
厚生労働省令で定める事業(業種)
業種は、労災保険の「事業の種類」で判断されますが、会社が複数の事業を行っている場合は、それぞれの事業に従事する労働者で判断、その導入可能な事業のみ、変形労働時間制を導入できる場合もあります。しかし労働者が飲食店と他の事業を兼務しているなどでは、導入不可と判断されることもあります。




2項 1週間単位の非定型的変形労働時間制の通知
使用者は、前項の規定により労働者に労働させる場合においては、厚生労働省令で定めるところにより、当該労働させる一週間の各日の労働時間を、あらかじめ、当該労働者に通知しなければならない。
(条文解説)
1週間単位の変形労働時間制を採用する場合は、1週間の出勤日ごとの労働時間を、その1週間の始まる前日までに書面で、労働者に通知しないといけません。
また緊急でやむ得ない事由が発生し変更したい場合は、前日までに書面で通知が必要となります。ただし、使用者の主観的な必要性のための変更は認められず、台風や大雨など客観的な事実が伴う必要があります。
3項 1週間単位の非定型的変形労働時間制の届出
第三十二条の二第二項の規定は、第一項の協定について準用する。
(条文解説)
1週間単位の変形労働時間制を採用するには、労使協定を締結して、労働基準監督署に届け出が必要です。
労働基準法32条の5「1週間単位の非定型的変形労働時間制」まとめ
- 繁閑の差がある小売業接客を伴う業種で、労働者30人未満の場合、1週間単位の変形労働時間制を採用できる
- 採用した場合、1日10時間まで働かせることができるが、週40時間の上限は変わらない
- 採用するには、労使協定の締結と届出が必要になる
労働基準法32条の5「1週間単位の非定型的変形労働時間制」社労士試験過去問と解説




条文だけでは、いまいち理解できないことが多いので、社労士試験の過去問で復習しましょう。
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H28年出題 要件
労働基準法第32条の5に定めるいわゆる一週間単位の非定型的変形労働時間制は、小売業、旅館、料理店若しくは飲食店の事業の事業場、又は、常時使用する労働者の数が30人未満の事業場、のいずれか1つに該当する事業場であれば採用することができる。
出典:社労士過去問ランド
H22年出題 1日の労働時間の上限
労働基準法第32条の5に定めるいわゆる1週間単位の非定型的変形労働時間制については、日ごとの業務の繁閑を予測することが困難な事業に認められる制度であるため、1日の労働時間の上限は定められていない。