解雇するには30日以上前に「解雇の予告」か30日分以上の平均賃金

新型コロナウイルスの感染拡大で業績が悪化した企業など、どうしても労働者を解雇せざるを得ない場面が発生します。しかし、解雇は労働者の生活に多大な影響を及ぼすことから、様々な制限や手続きを必要とします。解雇の予告もその一つです。
この記事では、労働基準法20条「解雇の予告」について、わかりやすく解説します。
解雇の予告とは
いきなり解雇と言われても、労働者とその家族の生活が困ってしまいます。そのため、30日以上前に解雇を予告するか、30日分以上の平均賃金を支払わないといけません。30日は、歴日数(カレンダー日数)なので、休業日も含みます。
平均賃金については、こちらの記事で確認して下さい。




ただし、予告をしても解雇が認められるわけではありません。労働者を解雇するときには、相当な理由が必要となります。こちらの記事で確認してください。




解雇が無効になる「解雇権濫用禁止の法理」
「使用者が労働者のことを気に入らないから、解雇した」では客観的合理性があるとは言えず、解雇を無効とする判断が下されます。これを「解雇権濫用禁止の法理」といいます。




中堅派遣会社
営業部 3年目 玉ねぎス
対面営業は必要ないと思っている。




中堅派遣会社
営業部長 M
とにかく「顔を出せ」が口癖の、昭和の営業脳。






はー、新規(営業先)取れないし仕事辞めたいけど、次のボーナスはもらってやめようかな…






今日何件取れた?まさか、今日も契約取れなかったの?






すいません、色々手を尽くしていますが、なかなか…






お前、先月も今月も全然数字できてねぇじゃん!






帰ってこなくていーからよ、とにかく数字上げろや!派遣契約結んで、お前が無償で働いて口座を開けろ!






あ、いや、すいません…






来月の営業目標は、今までの未達分も上乗せするから、達成できるまで休みなく死ぬ気で働け!できないなら、辞めろっ!






達成できないとクビってことですか…?






クビじゃねぇ!数字作れねぇなら、辞めるか死ねって言ってんだよ!






解雇権濫用!
勤務成績不良を理由とする解雇について、就業規則で「勤務成績又は業務能率が著しく不良で、向上の見込みがなく、他の職務にも転換できない等就業に適さないとき。」など定めていても、具体的数字が無いと、客観的合理性があるとは言えません。






管理人は、ブラック企業歴25年・社労士試験を受けようと思ってのは10年前…。勉強がまったく捗らないときに考えたのが、
「ブラック企業あるあると、法律を関連付けて記憶する!」勉強法です。
日々試行錯誤しながら、学習しております。
労働基準法20条「解雇の予告」条文




1項 解雇予告
使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。
出典:労働基準法 | e-Gov法令検索
(条文解説)
解雇するときは30日以上前に解雇を予告するか、30日分以上の平均賃金を支払わないといけません。ただし、地震などの不可抗力が原因で事業を継続できなくなった場合や、労働者が横領などの、重大な違反行為をして解雇する場合は、この手続きは不要です。




2項 解雇予告日数の短縮
前項の予告の日数は、一日について平均賃金を支払つた場合においては、その日数を短縮することができる。
(条文解説)
解雇をするときは30日以上前に予告することになっていますが、平均賃金を支払った日数分だけ、解雇予告の日数を短縮できます。この支払う平均賃金を「解雇予告手当」といいます。
例えば解雇日の10日前に解雇を言い渡すのであれば、20日分の賃金(正確には平均賃金)を支払えばOKです。解雇予告手当の支払は、解雇を行う上での手続にすぎず、支払により解雇が正当化されるものではありません。
したがって、解雇予告手当を支払ったとしても、必ずしも解雇が認められるわけではありません。
解雇予告手当 支払いの注意点
- 解雇の申し渡しと同時に、通貨で直接支払わなければならない
- 予告手当の支払いがあったときから、効力が発生する
解雇予告をしただけでは効力は発生しませんので、注意が必要です。
3項 解雇予告の除外認定
前条第二項の規定は、第一項但書の場合にこれを準用する。
(条文解説)
地震などの不可抗力が原因で事業を継続できなくなった場合、労働者が重大な違反行為をして解雇する場合は、解雇予告の手続きは不要になりますが、その際は労働基準監督署の認定を受ける必要があります。この場合は、即時解雇ができます。
解雇の効力は、使用者が即時解雇の意思表示をした日にさかのぼって発生します。(認定された日ではない)




解雇の効力の中止
法20条の規定により解雇予告を行った後に、労災(19条の事案)にあった場合、解雇の効力が中止されます。法19条が優先されるため、休業期間+予告期間は解雇ができないことになります。
ただし解雇予告は、消滅するわけではなく、停止するだけなので改めて解雇予告をする必要はありません。複数の条文、複数の法律を跨ぐ場合は、社労士試験の出題傾向が高いため注意しましょう。
労働基準法20条「解雇の予告」まとめ
- 解雇するには、30日以上前に解雇を予告するか、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない
- 平均賃金を支払った日数分だけ、解雇予告の日数を短縮でき、これを解雇予告手当という
- 地震などの天災や、労働者の重大な違反行為で解雇する場合は予告が不要だが、認定が必要
労働基準法20条「解雇の予告」社労士試験過去問と解説




条文だけでは、いまいち理解できないことが多いので、社労士試験の過去問で復習しましょう。
※答えは「解答・解説を見る」▼を押して確認してください。
H23年出題 雇用の解約の申入れ
労働基準法第20条は、雇用契約の解約予告期間を2週間と定める民法第627条第1項の特別法に当たる規定であり、労働者が一方的に労働契約を解約する場合にも、原則として30日前に予告することを求めている。
R2年出題 予告の取消
使用者の行った解雇予告の意思表示は、一般的には取り消すことができないが、労働者が具体的事情の下に自由な判断によって同意を与えた場合には、取り消すことができる。
H24年出題 即時解雇の効力発生日
労働者によるある行為が労働基準法第20条第1項ただし書の「労働者の責に帰すべき事由」に該当する場合において、使用者が即時解雇の意思表示をし、当日同条第3項の規定に基づいて所轄労働基準監督署長に解雇予告除外認定の申請をして翌日その認定を受けたときは、その即時解雇の効力は、当該認定のあった日に発生すると解されている。
H30年出題 解雇予告手当の支払時期
労働基準法第20条第1項の解雇予告手当は、同法第23条に定める、労働者の退職の際、その請求に応じて7日以内に支払うべき労働者の権利に属する金品にはあたらない。
H21年出題 労働者の責に帰すべき事由
使用者は、労働者の責に帰すべき事由によって解雇する場合には、労働者の帰責性が軽微な場合であっても、労働基準法第20条所定の解雇予告及び予告手当の支払の義務を免れる。
H26年出題 予告期間:原則
9月30日の終了をもって、何ら手当を支払うことなく労働者を解雇しようとする使用者が9月1日に当該労働者にその予告をする場合は、労働基準法第20条第1項に抵触しない。
H23年出題 例外:行政官庁の認定
天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合においても、使用者は、労働基準法第20条所定の予告手当を支払うことなく、労働者を即時に解雇しようとする場合には、行政官庁の認定を受けなければならない。
R1年出題 予告期間:期間の計算
使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少なくとも30日前にその予告をしなければならないが、予告期間の計算は労働日で計算されるので、休業日は当該予告期間には含まれない。
H24年出題 予告期間の短縮:日数計算
使用者は、ある労働者を8月31日の終了をもって解雇するため、同月15日に解雇の予告をする場合には、平均賃金の14日分以上の解雇予告手当を支払わなければならない。
H26年出題 予告期間の短縮
労働基準法第20条に定める解雇の予告の日数は、1日について平均賃金を支払った場合においては、その日数を短縮することができる。