法17条「前借金相殺の禁止」働くことを条件に金の前貸・相殺を禁止

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法17条「前借金相殺の禁止」働くことを条件に金の前貸・相殺を禁止

この記事では、労働基準法17条「前借金相殺の禁止」について、わかりやすく解説します。

法17条は、使用者が労働者を雇用する際に、労働者本人やその親族などにお金を貸し付け、雇用した後に貸し付けたお金を労働者の給与(賃金)から控除(差し引いて)して返済させる労働契約を禁止しています。

前借金(ぜんしゃっきん)とは

前借金とは、働くことを条件とした前渡しの金銭のことをいいます。

かんりにん

管理人は、ブラック企業歴25年・社労士試験を受けようと思ってのは10年前…。勉強がまったく捗らないときに考えたのが、
ブラック企業あるあると、法律を関連付けて記憶する!」勉強法です。
日々試行錯誤しながら、学習しております。

労働基準法17条「前借金相殺の禁止」条文

前借金相殺の禁止

使用者は、前借金その他労働することを条件とする前貸の債権と賃金を相殺してはならない。

出典:労働基準法 | e-Gov法令検索

(条文解説)
働くことを条件として、借金と賃金を相殺することが禁止とされています。「お金を貸すから、働いて返さなければならない。完済するまでは退職を認めない」という条件では、強制労働につながるため禁止されています。

法律上の相殺とは

「主に相手方に対して同種の債権を持っている場合、当事者双方の債権を対等額分消滅させる」ことを指します。

同じような意味で、「差し引き」がありますが、相殺と差し引きの違いは、引いた結果、残りがあるかないかです。つまり相殺の場合は「帳消しにする」という同義語からもわかるように、引いた結果、0(ゼロ)になる場合を言います。

前借金相殺の例

父親の借金を返済するために、娘がお金を貸し付けている会社で働かされ、月々の給料より借金分が引かれる。
・借金を返済できるまで、働くことの足止め(強制労働)になる。
・ただし、娘の意思(労働者の意思)で、相殺することは禁止されていない

労働関係と借金の関係を分けていれば(退職はできる状態)、賃金から借金を控除することができます。ただし、労働者本人の意思表示と、事前に労使協定を結んでおく必要があります。相殺が認められる場合は、

  • 身分的拘束を伴わないもの
  • 労働者が自己の意思で相殺するもの

が条件となります。

「給料差し押さえ」は前借金相殺になる?

労働者が借金をして返済がされない場合に、債権者(貸金業者など)から、使用者へ「給料差し押さえ」の通知がきます。差し押さえの上限金額は、生活保障のため上限が1/4までです。

給料差し押さえは強制執行であるため、前借金相殺にはなりません

強制執行とは
相手方に約束を守ってもらえない場合に、強制的に相手方の財産を取り上げるなどして、約束を実現させる方法です。

労働基準法17条「前借金相殺の禁止」まとめ

  • 労働者にお金を貸し付け、賃金から控除して返済させる労働契約を「前借金相殺」といい、禁止されている
  • 前借金相殺は使用者側のみ禁止で、労働者の意思により、借金と賃金を相殺することは禁止されていない
  • 使用者が労働者に金銭を貸すことは禁止されていない

労働基準法17条「前借金相殺の禁止」社労士試験過去問と解説

条文だけでは、いまいち理解できないことが多いので、社労士試験の過去問で復習しましょう。
※答えは解答・解説を見る」▼を押して確認してください。

H27年出題 趣旨

労働基準法第17条は、前借金その他労働することを条件とする前貸の債権と賃金とを相殺することを禁止し、金銭貸借関係と労働関係とを完全に分離することにより金銭貸借に基づく身分的拘束の発生を防止することを目的としたものである。

出典:社労士過去問ランド

H25年出題 親権者による金銭の借り受け

労働契約を締結する際に、労働者の親権者が使用者から多額の金銭を借り受けることは、人身売買や労働者の不当な足留めにつながるおそれがあるため、当該労働者の賃金と相殺されるか否かを問わず、労働基準法第17条に違反する。

H28年出題 自己の意思による相殺

労働者が、実質的にみて使用者の強制はなく、真意から相殺の意思表示をした場合でも、前借金その他労働することを条件とする前貸の債権と賃金を相殺してはならない。

H23年出題 金銭の貸付

労働基準法は、金銭貸借に基づく身分的拘束の発生を防止することを目的として、使用者が労働者に金銭を貸すこと、及び貸金債権と賃金を相殺することを禁止している。

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