法15条「労働条件の明示」採用時に働く条件を伝える義務がある

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法15条「労働条件の明示」採用時に働く条件を伝える義務がある

この記事では、労働基準法15条「労働条件の明示」について、わかりやすく解説します。

会社で新しく募集・採用を行い、労働者と労働契約を結ぶ際には、労働条件通知書を発行・伝える必要があります。似たような書類に雇用契約書がありますが、その違いは何でしょうか。

労働条件通知書と雇用契約書

労働条件通知書

労働条件通知書とは、使用者が労働者と労働契約を結ぶ際に交付する書類のことです。内容については、条文と合わせて解説します。労働条件通知書の交付は、労働基準法15条で義務付けられており、交付をしないと罰則の対象となります。

労働条件とは
労働者が契約を結んで使用者の下で働く際、労働者と使用者の間で取り決められた、賃金や労働時間など、就労に関する条件です。

雇用契約書

労働条件通知書と同じように、労働者に交付するものです。労働条件通知書の場合は、使用者が一方的に労働者に交付するものであることに対して、雇用契約書は双方が同意したうえで捺印・署名を行うという違いがあります。

雇用契約書は、民法で契約内容の確認をできる限り書面で確認することを推奨されていますが、必ずしも必須ではなく、交付しなかったとしても罰則はありません。

かんりにん

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労働基準法15条「労働条件の明示」条文

1項 労働条件の明示

使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。

出典:労働基準法 | e-Gov法令検索

(条文解説)
使用者が労働者を雇い入れるときは、賃金・労働時間その他の労働条件について、明示しなければなりません。明示内容には、「絶対的明示事項」「相対的明示事項」の二つがあります。

絶対的明示事項

絶対的明示事項とは、労働条件の中で、必ず明示しなければならない事項です。

①~⑥の事項については、書面の交付により明示しなければなりません。
※⑦については、口頭でよい(書面必要なし)とされています。
派遣の場合は、派遣元の使用者に交付義務が生じます。

③就業の場所・従事すべき業務

勤務地と仕事内容のことです。

④始業及び終業の時刻(就業時間)

所定外労働の有無(残業があるか)。

休憩時間、休日、休暇、就業時転換に関する事項

就業時転換に関する事項とは
労働者を日勤、夜勤など2組以上に分けて交替に就業させる場合、必要となります。記載が必要なのは、「交替期日」「交替順序」等に関する事項ですが、交代勤務をしない場合は、記載の必要がありません。

⑤賃金

給料の額・締め日・支払日・支払の方法を記載します。
退職手当については、相対的明示事項です。

⑥退職に関する事項

退職理由・解雇理由のことです。例えば、定年になったら退職してもらいます。無断欠勤が1週間に達したときは解雇します、などと記載します。

相対的明示事項

相対的明示事項とは、定めをした場合に明示しなければならない事項です。

こちらは、就業規則があれば就業規則のその部分を示しながら、口頭で説明すれば良いです。ただし、⑧退職金や⑨賞与の有無は問題になる可能性がありますので、書面で明示するのが望ましいです。

⑧退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算・支払の方法及び時期

退職金のことです。

⑬災害補償、業務外の傷病扶助

扶助とは
援助や力添えをするという意味です。業務外の傷病扶助とは、業務外(仕事中以外で)のけが・病気の際に、会社が援助する規定がれば記載します。

2項 労働契約の解除

前項の規定によつて明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。

(条文解説) 
民法で、労働者が退職する場合は14日以上前に使用者に申し出ることが定められています。ただし明示された労働条件が事実と異なる場合は、労働者の解除権が認められています。

解除権とは
使用者が採用時に明示した労働条件と、実際の内容が違っているときは、労働者は上記の14日を待たずにすぐに辞められる権利のことです。

解除権については、絶対的明示事項の相違の場合のみで、相対的明示事項の相違については認められません。

3項 旅費の負担

前項の場合、就業のために住居を変更した労働者が、契約解除の日から十四日以内に帰郷する場合においては、使用者は、必要な旅費を負担しなければならない。

(条文解説)
労働者が就業のために住居を変更し、採用時に明示した労働条件が違っていたため退職した場合で、退職後14日以内に帰郷する場合は、使用者は引越費用や旅費を負担する必要があります。負担は家族の旅費も含まれます。

労働条件について嘘をついて採用してはならない、それによって被害を被った場合は、補償しなければならないということです。

帰郷とは
故郷へ帰るという意味です。労働基準法で使用する場合は、就業のための住居変更から、退職時に元の住居に引越をすることを指します

労働基準法15条「労働条件の明示」まとめ

  • 使用者は、採用時に働く条件を伝える義務があり、労働条件の明示しなければならない
  • 明示事項には、必ず明示が必要な絶対的明示事項、定めがあるときに明示する相対的明示事項がある
  • 労働者には、採用時の労働条件と、実際の内容に相違がある場合は、すぐに辞めることができる解除権がある

労働基準法15条「労働条件の明示」社労士試験過去問と解説

条文だけでは、いまいち理解できないことが多いので、社労士試験の過去問で復習しましょう。
※答えは解答・解説を見る」▼を押して確認してください。

H21年出題 絶対的明示事項

労働契約の期間に関する事項、就業の場所及び従事すべき業務に関する事項は、使用者が、労働契約の締結に際し、労働者に対して書面の交付によって明示しなければならない事項に含まれている。

R1年出題 契約の期間

労働契約の期間に関する事項は、書面等により明示しなければならないが、期間の定めをしない場合においては期間の明示のしようがないので、この場合においては何ら明示しなくてもよい。

H24年出題 表彰に関する事項

使用者は、「表彰に関する事項」については、それに関する定めをする場合であっても、労働契約の締結に際し、労働者に対して、労働基準法第15条の規定に基づく明示をする必要はない。

R2年出題 賃金に関する事項

労働契約の締結の際に、使用者が労働者に書面により明示すべき賃金に関する事項及び書面について、交付すべき書面の内容としては、労働者の採用時に交付される辞令等であって、就業規則等(労働者への周知措置を講じたもの)に規定されている賃金等級が表示されたものでもよい。

H29年出題 派遣労働者

派遣労働者に対する労働条件の明示は、労働者派遣法における、労働基準法の適用に関する特例により派遣先の事業のみを、派遣中の労働者を使用する事業とみなして、適用することとされている労働時間、休憩、休日等については、派遣先の使用者がその義務を負う。

H28年出題 事実の相違

労働契約の締結に際し明示された労働条件が事実と相違しているため、労働者が労働契約を解除した場合、当該解除により労働契約の効力は遡及的に消滅し、契約が締結されなかったのと同一の法律効果が生じる。

H29年出題 帰郷旅費

明示された労働条件と異なるために労働契約を解除し帰郷する労働者について、労働基準法第15条第3項に基づいて使用者が負担しなければならない旅費は労働者本人の分であって、家族の分は含まれない。

H25年出題 労働契約の更新

使用者は、期間の定めのある労働契約であって当該労働契約の期間の満了後に当該労働契約を更新する場合があるものの締結の際に、労働者に対して、期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項を、書面の交付により明示しなければならない。

H24年出題 就業規則の交付

労働基準法第15条により、使用者が労働契約の締結に際し書面で行うこととされている労働条件の明示については、当該労働条件を記載した就業規則を交付することではその義務を果たすことはできない。

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