コロナ禍で雇用調整助成金を不正受給する会社。バレたらどうなる?

新型コロナウィルスの影響などを受けた企業が、雇用を維持するために利用できる「雇用調整助成金」、5兆円近く支出されたにも関わらず、パート・アルバイトなど非正規労働者のほとんどは、休業手当を受け取れていないといわれています。
その原因の一つは、企業が助成金の申請・受給したにも関わらず、従業員の休業手当は支払わないという「不正受給」によるものです。この記事では、「雇用調整助成金」を不正受給した会社の事例と、バレたらどうなるか?を紹介します。
助成金、補助金の違いとは
「助成金」「補助金」は、国や地方公共団体から支給されるお金のことです。この二つは受給要件に違いがあります。「助成金」は要件を満たせば受給できる可能性が高く、「補助金」は予算の上限があるため、申請しても必ず受給できるわけではありません。
コロナ禍の補助金では、小規模事業者が経営計画を作成し、販路開拓の取組等を支援するという「小規模事業者持続化補助金」などがあります。
雇用調整助成金の不正受給の事例
会社が雇用調整助成金の不正受給をする主な事例は、以下の2つです。




ブラック・派遣会社
営業部 新卒 チャッピー
派遣先は労働力ではなく、「安い労働力」がほしいだけと気づく。




ブラック・派遣会社
営業部長 M 「365日24時間、死ぬまで働け」が口癖。
従業員を休業させていないのに、休業させたことにして申請する






派遣スタッフの雇用調整助成金の申請書を至急作成してくれ!






派遣スタッフへ休業手当を支払うんですね!スタッフも仕事が無くて不安になっているので、助かります。






いや申請はするけど、休業手当は支払わない。






えーっと、これはどこに通報したらよいのかな…
ある会社では、実際は有給休暇を取得していた従業員に対して、休業手当を支払ったとうその申請書を提出し、不正受給をしていました。この会社には、助成金の全額と違約金などの返還を命じるとともに今後5年間、助成金の利用を禁止する処分が下りました。
架空の従業員を作り上げて、休業させたことにして助成金を申請する






この派遣スタッフ達の雇用調整助成金の申請書を早急に作成してくれ!






このスタッフ達は、派遣登録はしたけど、実際には働いていない「幽霊スタッフ」ですね…






実際に働いているかどうかは関係ない!架空の従業員を作るより、手間がかからないだろ!少しは効率を考えろ!






母さん、僕は不正行為に手を染めてしまいました!
これらの不正受給の他にも、企業が雇用調整助成金の過大受給が相次いでいるとの報告結果もあります。(会計検査院の2021年度決算検査報告)
不正受給の発覚する理由
不正受給が発覚する理由は、主に二つです。
労働局の調査
一つ目は、労働局の立ち入り検査です。コロナ禍で申請件数・不正件数が共に多くなっているため、立ち入り検査も強化されています。調査は事前予告なしの抜き打ち検査であることが多いようです。
従業員からの内部告発
二つ目は、不正を行っている会社の従業員や退職者による内部告発です。労働局では、不正受給に関する窓口を設置し、情報提供を呼び掛けているため、窓口への通報で発覚することも多くなっています。
不正受給へのペナルティー
不正受給がは発覚した場合、4つのペナルティーが科されます。
- 返還命令
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申請中の助成金は不正であるため、不支給決定となります。すでに支給を受けた助成金は、支給取り消し決定が行われ返す義務が生じます。
また、不正受給の翌日から返還の日まで、原則として年3%の割合で算定した延滞金の納付と、不正受給した助成金の額の20%に相当する金額の納付が求められます。
例:不正受給額1,000万円を1年後に返還した場合不正受給額:1,000万円
年3%の延滞金:30万円
制裁金 20%に相当:200万円
合計1,230万円の返還が必要制裁として、不正受給金額以上の納付が必要となります。
- 5年間の不支給措置
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不正受給をすると、不支給決定、または支給取消決定の日から、起算して5年間、ハローワークで取り扱う全ての助成金の支給を受けることができなくなります。
また不正受給を行った事業主等の役員などで、不正受給に関与した者が、他の事業主等の役員になっている場合には、当該他の事業主等についても、同様に5年間、助成金の支給を受けることができません。
- 公表
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不正受給が特に重大または悪質なものと認められる場合、原則として事業主等の名称を公表するとされています。公表の対象となる事項は4つあります。
- 事業主等の名称、代表者及び役員等(不正受給に関与した役員等に限る)
- 事業所の名称、所在地及び事業概要
- 助成金の名称、返還金額及び状況
- 不正の内容
また社会保険労務士など、専門家が関与した場合は、その名称や内容も公表されます。
公表の方法は、記者発表に加えて、管轄労働局のHPに掲載。掲載期間は3年。公表されると、融資を行う金融機関や取引先にも不正受給の事実を知られることになり、事業に支障が出る恐れがあります。
- 刑事告発
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詐欺罪になり、10年以下の懲役という重い罪が科されます。逃亡・証拠隠滅の恐れがあると判断した場合には、被疑者が逮捕されることもあります。
不正受給による詐欺を犯すと、警察に逮捕される可能性がありますが、必ず逮捕されるわけではありません。刑事告発するかどうかは、労働局の判断によります。
雇用調整助成金を不正受給。バレたらどうなる? まとめ
- 雇用調整助成金の不正受給とは、企業が助成金の申請・受給しても休業手当は支払わないこと
- 不正受給の事例には、
①休業させていないのに、休業させたことにして申請
②架空の従業員を作り上げて、休業させたことにして助成金を申請 - 不正受給が発覚すると、制裁として不正受給金額以上の納付が必要。詐欺罪で逮捕される可能性も